この変革の中心に据えられているのが高速・大容量の通信ネットワークだ。これなくして今後の軍の態勢は機能し得ない。このネットワークは、歩兵、航空兵、砲兵、装甲兵だけでなく、戦術的作戦を支援する後方支援部隊や情報機関まで、陸軍のあらゆる部隊・部局をつなぐ。
米陸軍が「マルチドメイン(多領域)作戦(MDO)」と呼ぶコンセプトにおいて、戦場での成功の可否は、敵より迅速に重要なデータを提供できるネットワークにかかっている。このため、ネットワークを武器の1つとして扱う軍事計画立案者もいる。米陸軍の2021年統合ネットワーク計画がその一例だ。
だが、このやり方では、すでに専門用語や抽象表現にあふれた計画立案プロセスがいっそう混乱するだけだ。より良いアプローチは、ネットワークを戦車やヘリコプターなどの兵器を効果的に使用するために不可欠な実現手段とみなすことである。
米陸軍のネットワークがどのようなもので、近いうちにどうなるのかを詳細に把握する最も簡単な方法は、戦術指揮・統制・通信プログラム執行局(PEO C3T)のウェブサイトを確認することだ。進行中の全ネットワーク計画について、非常に詳細なポートフォリオが掲載されている。
このポートフォリオには、現在資金が投入されているプロジェクト20件余りの概要説明も含まれている。陸軍のエンタープライズネットワークにおけるサイバーセキュリティー面など、他部局が管理するネットワーク関連計画は対象外だが、PEO C3Tの大要を熟読すれば、米陸軍が戦場ネットワークにおいて何を重視しているかがわかる。
ここで重要なのは、陸軍が、分散展開する各部隊に対し、激しい戦闘のさなかでも状況認識、共通の作戦計画、タイムリーな目標情報、多様な通信手段を横断的に提供するに当たり、戦術ネットワークに頼っているということだ。
ネットワークがなければ、個々の部隊は敵軍や友軍がどこにいるのか、特定の脅威を打破するのに最適な兵器はどれかもわからず、攻撃を受けていることを最高司令部にどのように警告すればいいかさえ判断がつかないかもしれない。