散開星団とは、同時期に誕生した数百個の恒星がまばらに集まったもので、所属する恒星はすべて共通の化学的性質を持っている。
オリオン座の三つ星の近くのおうし座に位置するヒアデスは、太陽系に最も近い散開星団で、冬の間中肉眼で見ることができる。天文情報サイト「EarthSky」によれば、約500個の星から成り、「雄牛の顔」とも呼ばれている。
地球に最も近いブラックホールを検出
そのヒアデス星団に、小型のブラックホールが複数存在する可能性あることが、英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(MNRAS)に掲載された論文で明らかになった。今まで検出された中で最も近くにあるブラックホールになる。ブラックホールは、光を発しないので直接には観測できない。そこで研究チームは、ヒアデス星団内の恒星の運動と進化をシミュレーションし、結果を恒星の実際の位置と速度と比較した。
恒星の位置と速度については、欧州宇宙機関(ESA)の天文観測衛星ガイア(Gaia)の最新データを用いた。ガイアは、天の川銀河(銀河系)の3次元(3D)地図の作製を目指して、数十億個の恒星の運動を高精度で測定している。
ブラックホールは2~3個
今回の研究結果は、ヒアデス星団の中かその近くに、小型のブラックホールが2~3個存在することを示唆している。論文の筆頭執筆者で、イタリア・パドバ大学の博士課程修了研究者ステファノ・トルニアメンティは「今回のシミュレーションでは、いくつかのブラックホールが現在(あるいは最近まで)ヒアデス星団の中央部に存在すると仮定した場合でのみ、星団の質量と大きさの両方が一致する結果となった」と説明した。太陽系に最も近いブラックホールとこれまで考えられていたのは、へびつかい座の方向に1560光年の距離にある「Gaia BH1」だった。へびつかい座は、北半球の夏(南半球の冬)の間中見えている。
今回の研究は、パドバ大とスペイン・バルセロナ大学宇宙科学研究所(ICCUB-IEEC)、英ケンブリッジ大学、欧州南天天文台(ESO)、中国・中山大学が共同で実施した。
(forbes.com 原文)