経済・社会

2023.09.21 08:00

IEA「化石燃料の需要は10年以内にピークを迎える」

Getty Images

ピークオイルの予測はこれまでにも何度も公表されてきたが、いずれも、後で誤りだとわかった。だが、国際エネルギー機関(IEA)は、2023年10月に刊行される年次報告書『2023年版世界エネルギー見通し(World Energy Outlook 2023)』において、長らく予測されていた「ピークオイル」がついに到来する時期について、再び最新の予測を明らかにした。

IEAのファティ・ビロル事務局長は「化石燃料需要は10年以内にピークを迎える」と題した『フィナンシャル・タイムズ』の論説記事において、記事タイトルのとおり、石油だけでなく天然ガスと石炭についても、2020年代の終わりまでに需要が永続的減少に転じるとの予測を示した。

こうした予測がなされるのは初めてのことではない。IEAや、エネルギー転換を推進するその他の団体は、これまでにもたびたびこうした予測を発表してきたし、今後も発表するだろう。問題は、ピークオイル論の登場からすでに1世紀以上が経つなかで、今回の最新予測が、これまでに多数あった類似の予測と違って、ついに現実になるかどうかだ。

ビロルは今回の予測にかなり自信をもっているようで、最新予測における「ピーク」は、グリーンエネルギーへの追加の補助金の有無や、その他のエネルギー転換を促す政策的判断の有無にかかわらず、確実に到来するものだと述べている。言ってみれば、そうしたものは織り込み済みという考えだ。

「現在の各国政府の政策方針のみから判断して、つまり、たとえ新たな気候変動対策が採用されないとしても、3種の化石燃料の需要はまもなく頭打ちになる見込みだ」とビロルは述べる。「それぞれの燃料の需要ピークが視野に入ったのは2020年代が初めてであり、その到来は多くの人々の予測よりも早かった」

「一部の専門家は、世界の石油需要がパンデミック期に急落したあと、ピークを過ぎた可能性を指摘した」とビロルは述べるが、当時IEAはこうした予測に懐疑的だった。しかしパンデミックから3年が経った今、電気自動車の(特に中国における)急速な普及により、IEAは、2030年までに石油需要が減少し始めるとの見通しを示した。

先述したとおり、IEAは石油だけでなく、天然ガスと石炭の需要もピークを迎えると予測している。3種の化石燃料の世界総需要は、2022年に過去最大を記録した。特に石炭需要が増加した主要因は、中国が経済成長を支える安定した電源として積極利用を進めていることだ。

しかし、ビロルによれば風向きはすでに変わりつつあり、中国でさえ例外ではないという。「世界最大の石炭消費国である中国においても、再生可能エネルギーおよび原子力が顕著に伸びており、経済成長の鈍化と相まって、石炭需要は遠からず減少し始めると予測される」とビロルは述べる。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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