一見すると今回の動きは、BRICSが「エネルギーの支配」を目指して積極的に打って出たように思える。新加盟国はBRICSのエネルギー生産量を押し上げるだけでなく、その多様性を大きく広げるだろう。
サウジアラビアは中国にとって最大の石油供給国であり、輸出量は今年8月時点で日量190万バレルに上る。BRICS加盟は、すでに広範な両国の経済関係を強固にするだけでなく、サウジアラビアに対する中国の影響力が増していることを意味する。中国が米国を出し抜いてサウジ・イランの関係正常化を仲介したのは記憶に新しい。
イランは中国の長年の戦略的パートナーであり、両国は安全保障と経済の両面で強固な関係を築いてきた。中国はこの10年にわたりイラン最大の貿易相手国であり、石油・ガス開発に注力している。石油輸出国機構(OPEC)創設メンバーのイランは、世界第2位の天然ガス資源と同4位の石油埋蔵量を誇る。
中国の仲立ちによる関係正常化に続くサウジアラビアの加盟は、中国政府が思い描く中東の安全保障体制の実現に大きく貢献する。UAEはイスラエル、インド、米国と共に経済協力枠組み「I2U2」を構成し、中国の野心を抑えつつインドに炭化水素を供給しているが、今回のBRICS加盟によってI2U2の先行きにも影響が出かねない。
新加盟国の半数は旧来の化石燃料の主要産出国だが、残りの半数は未来の燃料、特にあらゆるグリーンテクノロジーに不可欠なレアアース(希土類元素)開発に取り組んでいる。エジプトの石油生産量はサウジアラビアと比べて微々たるものだが、沖合のゾフル天然ガス田は地中海で発見された中では最大のLNG埋蔵地だ。また、砂漠での大規模太陽光発電の可能性、莫大なレアアース埋蔵量、それらの開発を担える人的資本も有している。