「安全で安価な移動手段」の現実
ウェイモとクルーズは、自分たちの車は人間のドライバーよりも安全だと主張する。しかし、彼らの「より安価で安全な移動手段を実現する」という夢は、多くの課題に直面している。ウェイモは2022年3月に、クルーズは2022年6月に有料サービスを開始した。クルーズのカイル・ヴォークトCEO は7月の決算説明会で「サンフランシスコのような都市はロボタクシーを、最低でも数千台走行させるキャパシティがある」と語っていた。
しかし、サービスが拡大するにつれ、同様の事件は増えており、今年4月には市役所の南に位置するハワード・ストリートで、2台の消防車が急行した火災現場に、クルーズの車が突っ込んだ。さらに8月には、クルーズの車が消防署の前の道路をふさぎ、消防車の出発を妨げた。
クルーズは、これらの事件についての具体的なコメントを拒否した。
不満をつのらせたSFFDの当局者らは、クルーズとウェイモへのより厳格な規制を求めている。CPUCがロボタクシー事業の拡大を認めた8月10日以降に、さらに12件の妨害事案が発生した。
「私はテクノロジーそのものを否定したい訳ではないし、その進化を止められると思っている訳でもない。私はただ、彼らに話し合いに応じるよう求めているだけだ」と、SFFDのニコルソン署長は話す。
彼女によると、クルーズとウェイモはいつも、彼女の要求に対し「当社の車両に対する適切な対応は次のようになります」と、版で押したような答えを返すという。「順序が逆だろうと言いたくなる。あなたたちの会社のほうが、適切な対応を学ぶべきだ」とニコルソン署長は述べた。
ウェイモとクルーズは、アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンでもロボタクシーを配備しているが、両都市の消防当局は、サンフランシスコの当局ほど多くの問題に遭遇していない。それは、これらの都市がはるかに大きく、歩行者の密度が低く、1平方マイルあたりの消防車両の数が少ないためでもある。
しかし、現地の消防・警察関係者は、クルーズとウェイモは、些細な問題が発生した際にも彼らの懸念に応えてくれたという。フェニックス警察の広報担当はフォーブスの取材に「一度だけ問題が発生したことがあるが、ウェイモは迅速に対応した。ウェイモは特定のエリアで降車や迎車をしないようにジオフェンスを設置した」と話した。
しかし、サンフランシスコにおいては、ウェイモは6月の時点で、最低限のジオフェンシングすら行っていない模様で、ロボタクシーが消防車の出動を妨げる事態が頻発している。
ニコルソン署長は、ウェイモとクルーズが彼らの苦情に聞く耳を持たないと述べている。「私たちが現場にたどり着けず人が死んだとき、誰がその責任をとってくれるのか」と彼女は憤りをあらわにした。
(forbes.com 原文)