北米

2023.09.15

「脱テレビ」加速の米ディズニー、ABCネットワーク売却を検討

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米メディア・娯楽大手のウォルト・ディズニーは、傘下のABCネットワークとテレビ局を地方テレビ局運営会社のネクスター・メディア・グループに売却する方向で予備的協議を行ったと、ブルームバーグが9月15日に報じた。この動きは、既存のテレビ事業の売却を検討する同社の最新の試みと考えられる。

交渉はまだ予備段階であり、具体的な金額はまだ提示されていないと関係者の1人はブルームバーグに語った。

ABCはESPNなどの他のディズニー傘下のネットワークと番組を共有しているため、取引は複雑になる可能性がある。ブルームバーグによると、ネクスターは適切な価格にしか興味を示さない模様という。

ABCの番組には、全米ニュースに加えて、人気ドラマの『グレイズ・アナトミー』や『ジェネラル・ホスピタル』、リアリティ番組の『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』や『アメリカン・アイドル』などがある。

ディズニーのボブ・アイガーCEOは、7月のCNBCとのインタビューで、同社はリニアテレビ(タイムテーブルに沿ってリアルタイムで視聴する従来型のテレビ放送)の多くの資産を売却することを検討していると語っていた。ABCの重役からディズニーのトップに登りつめたアイガーは、リニアテレビのビジネスモデルが「破綻している」と述べていた。

一方、ネクスターはレガシーメディアの買収に乗り出している。ネクスターの元社長で、現在はCEOを務めるトム・カーターは、13日のバンク・オブ・アメリカによるイベントのプレゼンテーションで、同社が再編を試みる大手メディア企業から資産を購入しようとしていると述べた。

テレビとエンターテインメント業界は変革期を迎えている。ニールセンのデータによると2022年7月を境に、視聴者がテレビを見る最も一般的な方法は、従来のリニアテレビに代わり、ネットフリックスやDisney+などのストリーミングサービスになっている。

PwCは今年6月、ケーブルテレビをやめてストリーミングに切り替える視聴者が増えるため、リニアテレビ業界は2027年までに300億ドル(約4兆4000億円)を失うと予測した。2019年11月にDisney+を立ち上げたディズニーは、すでにHuluの株式60%以上を保有しているが、残りの33%をコムキャストから買収する手続きを進めている。この取引は9月30日に完了する予定だ。

テキサス州アービングに本社を置くネクスターは、計200局のテレビ局を運営する米国最大の地方テレビ局運営会社とされている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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