国内

2023.09.19 16:30

観光都市・川越、次なる100年へ 地域経済を潤す新循環づくり

督 あかり
産業振興の面では、企業から進出や規模拡大の相談を数多く受けているが、余剰の産業用地がほぼなく、事業拡大や起業のニーズに応えられない。これが川越市の課題だという。
 
「工場を拡充したいという市内の企業があったのですが、土地が確保できずに市外に工場を構えるケースがありました。産業を興し、起業を支えたいと考える私たちは忸怩たる思いにかられました。産業用地に適した土地の調査を進めており、企業にアピールできるよう、職員と一丸となり対応しています」
 
商業・工業・農業の産業が好バランスを持つ川越市として、それらをかけ合わせた新たな産業スキームもイメージしている。
 
「たとえば、農業と観光を結びつけたグリーンツーリズムです。従来の農業ふれあいセンターをリノベーションし、バーベキュー場を併設する農業×観光の拠点が稼働しています」
 
地場産の野菜がキーアイテムになり、芋掘りや直売会などの体験型ツーリズムへの波及も期待される。歴史や農業基盤と時代に即した体験を結びつけて「面」で訴求していく。これも新たな川越型ツーリズムのかたちだろう。
復原された川越市の旧川越織物市場 

復原された川越市の旧川越織物市場 


最近では、市指定文化財として歴史的・文化的にバリューを持つ旧川越織物市場を復原。趣のある建物の特長を生かしつつ、地域経済の活性化を担うクリエイターの創業の支援や様々な分野の方との交流を通じて新たな価値を生み出す拠点として活用する取組みを進めている。

「使うことのできる歴史文化遺産」という、この建物ならではの個性を活かし、川越に住む人たち・地域の資源・ビジネスをつなぐ役割を果たすことで、川越の特性を活かしたさらなる魅力の創出を目指す。
 
「2022年12月に市制施行100周年を迎えました。次の100年も企業や起業家、観光客、そして何より市民に選ばれ続ける都市を目指しています。スピード感を重んじながら、調和を持って取り組んでいければと思います」
 
川合が見上げる鐘楼からは、鐘の音が一帯に届いている。川越市が進む次なる100年のビジョンも、このセンタースポットから市外、そしてグローバルへ。多くの共創を重ね、響き渡っていく。

川合善明◎川越市長。1950年埼玉県川越市生まれ。1973年早稲田大学政治経済学部卒業。1977年東京教育大学(現筑波大学)卒業。1979年に弁護士として活動を始め、1985年に川合法律事務所を開設した。川越青年会議所財務室長、川越市選挙管理委員長、東京弁護士会副会長、筑波大学法科大学院客員教授などを歴任。2009年に川越市長選挙に出馬して初当選。現在4期目を務める。

文=佐々木正孝 写真=近藤 誠

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