国内

2023.09.19 16:30

観光都市・川越、次なる100年へ 地域経済を潤す新循環づくり

強みを生かして、地域経済の循環を

川合が言及した「商工農のバランス」を掘り下げる前に、川越市の地勢を確認しておこう。都心から30km圏内にあり、東武東上線、JR川越線、西武新宿線の3路線により、都心から1時間以内でアクセスできる。道路は、関越道と国道254号が南北に、国道16号が東西に、圏央道も近くを通るなど、流通拠点としてのプレゼンスも高い。
 
「江戸時代は城下町として栄え、周辺部の農産物や織物などが集積。新河岸川の舟運を生かして大消費地の江戸へ輸送する物流拠点として発展してきました。交通の要衝であり、地域における商業・工業・農業の中心地だったのです。こうした歴史的なバックグラウンドが市の強みにつながります。商業だと年間商品販売額が県内4位で、工業では製造品出荷額が県内3位、農業産出額は県内6位です。この商業・工業・農業のバランスの良さは埼玉県内でも屈指なのです」
 
川越駅周辺部は繁華街として商業が発展しており、郊外には高度経済成長期に多くの工業団地が出現した。農産物では「川越いも」など地域名を冠したブランドで知られる。観光都市としてのブランド力に加え、こうした商工農のバランスの良さは、鬼に金棒に思える。

しかし、この交通アクセスの良さが諸刃の剣になる。川越市の観光アンケート調査(令和4年度)を参照すると、市内を来訪する観光客は日帰りが94.2%に及び、宿泊に伴う消費が発生しにくい現状がある。コロナ禍が明けて人流が増えても、地域経済の循環に直結しないのだ。
 
「観光客はまちの活気を生み出してくれます。しかし、あらゆる産業が潤って経済的に発展しなければ、持続的な川越市の姿を思い描くことはできません。そこで私たちが力を入れるのが企業誘致や創業支援の取り組みです。スタートアップの起業から吹く新しい風に大きな期待があります」
 
川越市に拠点を置く企業にも、グローバルに接続する注目株はある。Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARDでは、2018年にイーグルバスが部門賞(ローカル・ヒーロー賞)を受賞し、2020年には「COEDO(コエド)ビール」を手がける協同商事がグランプリを獲得した。ICTと人間力をマッチングさせるイーグルバス、日本発のクラフトビールとして世界20カ国で愛飲される協同商事のように、各業界でキラリと輝くリーディングカンパニーが登場する期待はあるのか。

次の100年に向けた、市政ビジョン

「川越市は、民間調査機関やメディアによる各種ランキングで『住みやすいまち』『暮らし心地のよいまち』として上位入りの常連の都市です。蔵造りのメインロードや駅周辺の繁華街など、多くの人でにぎわうエリアがある一方、高齢化が進んで買い物客が少なくなってしまった商店街、また老朽化するままに残されている建物があります。
 
住みやすく、誰もが住み続けたいと思うまちとして発展していくためには、観光だけではなく、住む人たちに寄り添ったまちづくりをしていかなければなりません。そのための取り組みの一つが産業振興であり、まちの価値を高め続けるものでもあるのです」
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文=佐々木正孝 写真=近藤 誠

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