例えば、夜遅く女性が帰宅するときに家まで同行してくれるサービスがある。またタクシーに乗ったときにスマホを通じて乗客がどこでどんな車に乗ったのかについての情報を受け取れる「タクシー安心帰宅サービス」というのもある。
それらがなくても、夜中に女性が1人でも平気で歩けるという認識がある。もちろん、凶悪犯罪がないわけではないが、それでも日常的に銃を持っている人や薬漬けになっている人が徘徊しているわけではないので、安全だという認識だ。
公開には被疑者の同意が必要
そんな韓国だが、最近起きている凶悪な事件を見ていると、この国も果たして安全な国だと安心していられるのだろうかと疑問になる。今年の5月、20代の女性が帰宅途中、自分のアパートのエレベータ前で急に後ろから回し蹴りされ、気絶した際に連れ去られレイプされそうになった事件があった。
回し蹴りをされる様子や失神した女性を荷物のように肩に乗せて連れ去る様子は防犯カメラに収められていて、難を逃れた女性が通報したため犯人は捕まったが、加害者の顔は公開されなかった。
韓国の現行法では、殺人や性暴力をはたらいても、裁判にかけられ判決が確定するまでは、身元の公開は禁止されているからだ。
5月26日には、見ず知らずの同年代の女性を残酷に殺し、遺体を遺棄したとして容疑者が逮捕された事件があった。殺人事件であったため容疑者の写真は公開されたが、その写真が実物と異なるとの議論が起き、騒ぎになった。
なぜなら、容疑者がマグショットを拒否したため、過去に撮られた証明写真を公開したからだった。これまでも、殺人の容疑者の写真が公開されても、まったく実物と似ていないという議論は何度もあった。
ハリウッドの犯罪映画などにはよく登場するが、警察に捕まった犯罪者は、身長がわかる数字を背景にした正面写真と横写真を撮られる。これを俗に「マグショット」という。マグショットの正式名称は、「ポリス・フォトグラフ」である。
マグショットを公開するかしないかは、その国の法律によって異なる。韓国ではマグショットを公開するには、被疑者の同意が必要である。だから、被疑者がマグショットの公開を断ると、警察はその代わりに彼らの証明写真を公開することになる。
日本ではどうかわからないが、韓国の証明写真は、だいたいは実物よりきれいになるように加工するので、実物とかけ離れてしまうことが往々にしてある。