アジア

2023.09.16 09:00

凶悪事件の頻発で韓国では「マグショット公開法」が成立

世論の動きで政府が動く

また、8月には「登山路性暴力殺人」という事件が起きた。8月17日の真昼間に、ソウル市の生態公園とつながっている登山路で女性が襲われ死亡するというものだった。犯人は、女性を鉄製のナックルで暴行し、首を絞めるなどして気絶させ、性的に暴行しようとしたという。

犯行を見かけた通行人が通報して、犯人は現場で逮捕された。被害者の女性は病院に運ばれたが、19日に死亡した。犯人は気絶した女性を20分間も放置し、救急隊員が救命措置を取っているときでさえ、平気な顔で水が飲みたいと言ったと言う。

この犯人は、5月の回し蹴り犯のニュースを見て、自分も被害者を気絶させた後、防犯カメラのないところで、犯行しようとしたという。

当然のことだが、世論は犯人に対しての憤りで溢れた。被害者がまだ生きていたときでさえ、犯人が軽い刑になることになってはいけないと、ネットでは大騒ぎとなったが、被害者が死んでからは、さらに犯人に対して殺人者として顔を公開するよう要求が高まった。

結果的に登山路事件の犯人は、マグショットが公開され、現在の彼の顔を全国民が知ることとなった。だが、前述の回し蹴り犯や同年代女性殺人の犯人などは、マグショットの公開を拒否したため証明写真しか見ることができない。

こうして韓国では、安全が危うくなっていることに対する不安感などが高まり、世論がマグショットを公開することに賛成するほうへと動き始めた。そのような世論を考慮してか、政府と与党は国会に働きかけて、「マグショット公開法」(俗称)を推進させた。

そして、国会の法制司法委員会は、9月12日午後、法案審査第1小委員会を開き、「特定重大犯罪被疑者など、身元情報公開に関する法律案」をはじめ、計17件の法案を併合審査、委員長代案を作って議決した。

内容は、内乱・外患罪、殺人など、強力犯罪、性暴力犯罪、児童・青少年対象の性犯罪、麻薬犯罪など、特定重大犯罪被疑者などについて、30日以内の最近の姿を公開し、必要な場合は強制撮影も可能にしている。

これから、犯罪者は直近の顔が公開されることになり、凶悪犯罪が少しでも減ってくれることを祈るばかりだ。正直言えば、人の顔は写真で見ても覚えきれないのだが。

文=アン・ヨンヒ

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