欧州

2023.09.14

世界遺産ベネチアが「危機遺産」に指定される可能性

shutterstockStefano Mazzola / Shutterstock.com

何世紀にもわたって観光客を魅了してきた「水の都」、イタリアのベネチアが、ユネスコ世界遺産委員会によって、保全が危ぶまれる「危機遺産」として指定されるかもしれない。

この判断は、サウジアラビアのリヤドで開催されているユネスコの世界遺産委員会で下される。21の委員国で構成される世界遺産委員会では、200を超える世界遺産について評価し、危機遺産に加えるべきものを決定する予定だ。

ユネスコの専門家チームは2023年夏「ベネチアとその潟」を危機遺産に指定すべきと勧告する文書を公開した。ベネチアは、オーバーツーリズム(観光公害)、気候変動、開発計画による被害の防止に関して充分な対策をとれていないと同文書では指摘されている。

リヤドで開かれる委員会は、正式には「第45回世界遺産委員会拡大会合」と呼ばれ、9月10日から9月25日までの日程で行われている。

ベネチアなどの世界遺産に関する決定を下す21の委員国は、アルゼンチン、ベルギー、ブルガリア、エジプト、エチオピア、ギリシャ、インド、イタリア、日本、マリ、メキシコ、ナイジェリア、オマーン、カタール、ロシア、ルワンダ、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、サウジアラビア、南アフリカ、タイ、ザンビアだ。

ユネスコの専門家は、1157の世界遺産(「顕著な普遍的価値」を有すると見なされるもの)の状態を定期的に評価している。このうち、2023年1月時点で、32カ国55カ所の世界遺産が「危機遺産」と指定されている。

「危機遺産」のリストには、例えば都市開発によって景観が損なわれる恐れが指摘される「ウィーン歴史地区」、周辺情勢の不安定さが問題になっている「エルサレム旧市街とその城壁群」、密猟や違法な伐採などが進む、3つの熱帯雨林で構成されるインドネシア・スマトラの熱帯雨林などが含まれている。

ベネチアは、2021年にも危機遺産入りを勧告されたが、大型クルーズ船の乗り入れを禁止したことを受け、ユネスコは危機遺産への登録を見送っていた。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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