ただし、お金は安心感を高め、特定の心理的欲求を満たすことはできるものの、感情的なつながりや恋愛相手としての相性を保証するものには必ずしもならない。高所得者の多くは、恋愛をしたりパートナーを見つけたりするのが難しいとこぼし、次のように語る。
「仕事と恋愛のバランスを考えると、自分は真実の愛を手に入れられないのではないかと思うことがよくある」
「自分のライフスタイルが自分を孤立させていて、本当の自分を受け入れてくれる人を見つけるのが難しいと感じることがある」
「出張やイベントが多く、人々は私そのものに魅力を感じているのか、それとも私の周りの世界に魅力を感じているのかと考えてしまう」
これらは真っ当な懸念だが、そう思えるような状況でも希望はある。
巷ではこのところ、本来なら自分のタイプや条件には合わないような人にまで敷居を広げる「オープンキャスティング」と呼ばれるパートナー探しがトレンドになっているが、一方で富裕層の人は出会いの範囲を狭め、交際相手に対して一定の条件を設定する傾向にある。こうした条件にこだわるがあまり、恋愛指南のコーチや、出会い系アプリ・サイトに大金を支払うことをいとわないのだ。
もしあなたが高所得者で、純粋な恋愛をすることが難しいと感じているのなら、富が恋愛観の形成に与える影響について学ぶとよいかもしれない。
例えば、2016年に学術誌Frontiers in Psychologyに掲載された研究論文では、異性愛者の男性は、裕福な人ほど交際相手の外見に不満を持つ傾向にあることが明らかになった。また、男女を問わず裕福な人は、交際相手とは別の魅力的な人に興味を示す傾向が高かった。
2012年に学術誌PNASに掲載された研究論文では、裕福な人は非倫理的な行動について比較的寛容であることが示された。この研究に基づき、裕福な人が恋愛関係で意図せず孤立してしまう理由を、以下にいくつか挙げる。
・ルールに対する考えが甘い。自動車の運転で交通違反をする傾向があり、特定のルールは自分には当てはまらないという考えをほのめかす
・歪んだ倫理観。公正さよりも利己的な理由を重視する傾向があり、交渉でうそをついたり、職場で問題のある慣行を支持したりする
・思慮のなさ。他人から大切なものを奪う傾向があり、共感や理解が欠如している可能性がある
・勝つことへの過度なこだわり。ゲームであれ、仕事であれ、自分がトップに立つためには不正行為もいとわない。