同社は欧州の電動キックボード大手企業の一つで、昨年1月の資金調達で評価額が84億ドル(約1兆2000億円)に達した。パリで電動キックボードレンタル事業は行っていなかったが、同市が禁止令を出したことは、業界に大きな試練を与えているとカバノフは語る。
「現在の状況は、この業界が拡大を急ぎ過ぎた結果と言える。もっと秩序ある形で、ゆるやかに成長することもできたはずだ。そうすれば各都市が電動キックボードに慣れる時間が生まれていた」(カバノフ)
パリではこれまで、Dott(ドット)やLime(ライム)、Tier(ティア)といった企業が市当局の認可のもと、合計1万5000台の電動キックボードを配備していた。しかし、安全性や無謀運転、駐車場所などの問題について苦情が寄せられ、住民投票が行われた結果、9月1日にサービスの禁止が決まった。
カバノフは、このような状況の中でも、業界には他の都市での事業を拡大するチャンスがあるとみている。ボルトは、配車サービスやカーシェアリング、フードデリバリーなどの事業で欧州とアフリカの45カ国に進出しており、各地の当局とのやり取りで豊富な経験を持っている。
「われわれは信用の回復に尽力している。つい最近にも複数の市や国の当局者と話をしたが、彼らはサービスの価値を理解しており、パリのような禁止は望んでいない」とカバノフは言う。
今年初め、ボルトは新規株式公開(IPO)に向けて新たな最高財務責任者(CFO)を任命した。カバノフは、2025年までにIPOの準備を整えていくと語ったが、上場の具体的な時期についてはコメントを避けた。ボルトは財務情報を開示していないが、カバノフによると同社は昨年から収益性を大幅に改善しており、来年は黒字化を果たす計画という。
電動キックボード分野では、Bird(バード)のような大手も収益面で苦戦している。一方、米国のライムは先日、今年上半期のEBITDA(利払い・税・償却前利益)が2700万ドルの黒字を達成したと報告。ただ、売上高は公表していない。ライムもIPOを準備中としている。
(forbes.com 原文)