事業継承

2023.10.28 12:45

機械でできるならやってみろ。「和包丁で日本一に」山脇刃物製作所

左・五十嵐宣さん/右・出雲巧真さん(読むふるさとチョイス)

そこから、師匠と弟子の間で徹底的な技術の継承が行われた。「失敗を恐れずにどんどん挑戦すべし」という方針のもと、ひたすら実践を積んだ職人志望の青年は、2年後には一端の刃付け職人になっていた。
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「日本一の技術集団になれ」


現在、山脇刃物製作所では3名の刃付け師が働いている。

1番上の兄弟子の名は五十嵐宣さん。伝統工芸に携わりたいと言って、会社の門を叩いたあの青年だ。同社の刃付け職人としてはもう13年のキャリアになる。「今や五十嵐も教える立場です。五十嵐が研ぐ包丁は、現在の堺ではトップレベルですよ」そう言って山脇さんは嬉しそうに笑う。

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「五十嵐が研いだ包丁が欲しいと言って、ここまで買いにくる人が大勢います。私が目指した“高級化”というのは、まさにそういうこと。一種のブランディングです。量より質。手を抜かずに、時間をかけてきちんといいものをつくること。自社製品に誇りを持つこと。それが何より大事だと思っています」

社長のその考え方のもと、山脇刃物の職人たちは今日も時間をかけて技を磨き上げ、最高品質の刃物づくりに励んでいる。
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「常々社員にも自分にも言い聞かせていることがあります。それは、『日本一の刃物屋になろうと思うな。日本一の技術集団になれ』ということです。伝統を守るということは、技術を守るということ。そこに、職人としての喜びを感じてほしい」

そう語る山脇さんの言葉には、入社10年目のターニングポイントで感じていた「この包丁業界全体を良くしていきたい」という深い想いが変わらず詰まっている。長い歴史を持つ地元の伝統工芸を愛し、尊重しながら、より洗練された職人技を追求し続ける技術集団。その弛まぬ努力に裏付けられた職人としての誇りこそが、堺打刃物が世界で愛され続ける所以なのかもしれない。

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山脇刃物製作所

文=井上由香 写真=辻茂樹

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