モビリティ

2023.09.13 10:30

米独トラック大手3社が電動化に本腰、4400億円で合弁会社

遠藤宗生

Getty Images

エンジンメーカーの米カミンズとトラックメーカーの米パッカー、ドイツのダイムラー・トラックの3社は、主に物流トラック向けのバッテリーセルを米国で生産するため、この種の事業としては北米最大となる合弁会社を設立する。

3社は合計30億ドル(約4400億円)を投資する計画で、約3年後に始動予定のベンチャー(名称未定)にそれぞれ30%ずつ出資。中国のバッテリーメーカー、EVEエナジー(恵州億緯鋰能)も参加し、10%の株式を保有する。

ディーゼルエンジン大手で、近年はクリーンテックに進出しているカミンズのジェニファー・ラムジー最高経営責任者(CEO)はフォーブスの取材に「年間21ギガワット時のLFP(リチウム鉄リン酸塩)バッテリーセルを生産する予定だ」と語った。

3社は、業界が転換期を迎える中で「コスト競争力があり、性能が高いセルを確保するために、この重要な投資を分かち合う」とラムジーは説明。電気自動車(EV)用のバッテリー工場は数多く建設中だが、「商用車や物流トラックに特化したバッテリーのプロジェクトは、私が知る範囲で北米には他に存在しない」と述べている。

米国最大の自動車市場であるカリフォルニア州は最近、2045年までにすべての中型・大型トラックの温室効果ガス排出量をゼロにすることを義務づける規則を制定した。一方の連邦政府は、国内でのバッテリー工場や部品工場の建設を促進する新たな優遇策を打ち出している。

ラムジーによると、EVで一般的なリチウムイオン電池ではなくLFPを採用した理由は、コストが比較的低いことにある。LFPは、リチウムイオンよりもエネルギー密度が低く、重量も少し重いが、高価なニッケルやコバルトを使用しておらず、さらに耐久性に優れている可能性もあるという。また、リチウムイオン電池よりも過熱や発火の可能性が低い点もメリットとなる。

しかしこの合弁事業は、中国企業のEVEが参加することで、立ち上げが遅れる可能性がある。3社の発表によると、対米外国投資委員会(CFIUS)は、EVEの参加に問題がないことを確認する審査を実施する予定だ。

ラムジーは「EVEは、LEPバッテリーの開発に関して最先端のソリューションを持っている。このプロジェクトは、米国内に工場とサプライチェーンを構築し、米国の雇用を創出することにつながる」と説明した。

過去1年間に発表された北米の主要な電池工場は、ほぼすべてリチウムイオン電池を生産するものだが、フォードはLFP電池とニッケル・コバルト・マンガン・リチウムイオン電池の両方を製造するミシガン州の新工場に35億ドルを投資している。このプロジェクトもまた、中国の提携企業であるコンテンポラリー・アンペレックス・テクノロジー(CATL、寧徳時代新能源科技)のLFP技術に依存している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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