家族信託のコンサルティングを行うファミトラが40代から60代で親が存命の約400人を対象に行った調査では、親が認知症になり、介護施設へ入居せざるを得なくなったとき、その費用を親の資産で賄うと考えている人が8割を超えた。しかし、親が実際にいくら現金を持っているかを把握していない人は79パーセント。もしかしたら、介護施設の入居金にはぜんぜん足りない恐れもある。そのときは親の家を売ろうと考えている人も少なからずいるが、そこには資産凍結という重大な問題がある。
認知症を発症すると判断能力が喪失したと見なされ、その人の銀行口座からの現金の出し入れ、株や不動産の売買などができなくなる。いわゆる「資産凍結」だ。それを知らない人は、今回の調査で7割にのぼることがわかった。おっとり構えていては、あとで慌てることになる。
親の資産を子どもが管理する方法には、生前贈与、任意後見人制度、家族信託などがある。生前贈与は現金を贈与してもらうため、いちばんシンプルだが、認知症を発症してからでは手続きが複雑になり、分配をめぐって家族で揉める事態になりかねない。また、相続税よりも高い贈与税がかかることもある。任意後見人は、財産管理のほか、病院の入退院の手続きなどの生活支援を行ってもらえる制度だが、手続きが煩雑で制約も多い。さらに任意後見監査人を立てる必要があり、監査人には報酬を支払わなければならない。
そこで今注目されているのが家族信託だ。もっと簡単に認知症を発症した家族の財産を管理できるようにと2007年に開始された。後見人制度と違って自由度が高くデメリットがほとんどないという特長があるが、新しい制度なのでまだ知名度が低い。今回の調査でも、知っている人は少数だった。家族信託では、相談に乗ったり、手続きの支援や公正な運用をサポートする専門のサービスも増えている。将来、親が認知症になって慌てないよう、当人も含め、今から財産管理について話し合っておくのがいいだろう。