リスクオフモードの市場
8月の米国の各指数は1桁台前半の下落となり、なかでもナスダックは最大の下げ幅を記録した。国際市場も反落した。先進国市場の下げ幅は、米国市場をわずかに上回り、新興国市場の下げ幅は最悪だった。債券すらも下落した。金利上昇で、米国総合債券指数が小幅に下落したのだ。全体として、金融市場は8月を、リスクを回避して安全資産に向かうモードで過ごした。ハイテク株や新興国市場のようなリスクの高い投資が回避され、それほどダイナミックではない投資に向かったわけだ。
プラス・マイナスが入り交じった経済ニュース
最近のこうした市場パフォーマンスは、経済の基礎的状況に起こっていたことを反映していた。第2四半期の経済成長率は予想を上回ったが、データは、今後成長が鈍化する可能性が高いことを示していた。さらに、景況感と消費者信頼感指数(Consumer Confidence Index、CCI)はともに後退した。最後にインフレ率は、雇用の伸びが鈍化しているにもかかわらず、再び上昇の兆しを見せた。
しかし、悪いニュースばかりではない。所得と支出の伸びは予想を上回った。それでもこのデータでは、投資家の懸念を弱めるには足りなかった。
インフレ傾向は収まったか?
こうした懸念や、8月中の市場パフォーマンスの低迷にもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)が一時的に利上げを見送るのではないかという期待から、8月末にかけて市場は少し上昇した。金利は、世界の中央銀行首脳が8月末に集まったジャクソンホール会議に先立って上昇し、特にジェローム・パウエルFRB議長が8月25日に基調講演を行なった後に上昇したが、その後は戻している。
インフレ率はわずかに上昇しているが、データを深く分析すれば、その傾向は落ち着いてきているはずだ。成長率は鈍化しているが、経済は成長している。成長の鈍化は、インフレにとっては良いことだ。進歩は遅くなっているかもしれないが、我々はまだ前に向かって進んでいる。
全体像、リスクはあるが見通しは明るい
いくつかの側面で弱含みになっているとはいえ、8月のニュースはまずまずだった。経済は成長し続け、より多くの人々が職を得、働き、消費した。インフレ率はまだ高いが、正しい方向に向かっている。FRBはインフレを警戒しているが、利上げは終わりに近づきつつある。先の見通しは明るい。もちろん、リスクはまだ残っている。最大の米国内でのリスクは、インフレ率が再び急上昇することだ。これがさらに金利を上昇させ、FRBに利上げを続けさせる可能性がある。
米国だけでなく、ウクライナの戦争や中国のようなワイルドカードもある。まだ見えていないリスクは常に存在するため、保証されたものは何もない。
それでも、ファンダメンタルズは健全だ。経済は減速しているかもしれないが、成長は続いている。最大の問題であるインフレ率も低下傾向にある。秋に向けて、我々は良い立ち位置にいる。
(forbes.com 原文)