北米

2023.09.15 09:30

インフレ率はまだ高い米国、しかし正しい方向に向かっている

Getty Images

2023年8月、投資家はリスクに対して神経質になり、市場は軒並みある程度の下げに見舞われた。そのパフォーマンスを振り返り、経済の根底で何が起きていたのかを検討しよう。そして、今後数カ月間以内にインフレ緩和が期待できるのかについて考えてみたい。

リスクオフモードの市場

8月の米国の各指数は1桁台前半の下落となり、なかでもナスダックは最大の下げ幅を記録した。国際市場も反落した。先進国市場の下げ幅は、米国市場をわずかに上回り、新興国市場の下げ幅は最悪だった。債券すらも下落した。金利上昇で、米国総合債券指数が小幅に下落したのだ。

全体として、金融市場は8月を、リスクを回避して安全資産に向かうモードで過ごした。ハイテク株や新興国市場のようなリスクの高い投資が回避され、それほどダイナミックではない投資に向かったわけだ。

プラス・マイナスが入り交じった経済ニュース

最近のこうした市場パフォーマンスは、経済の基礎的状況に起こっていたことを反映していた。第2四半期の経済成長率は予想を上回ったが、データは、今後成長が鈍化する可能性が高いことを示していた。

さらに、景況感と消費者信頼感指数(Consumer Confidence Index、CCI)はともに後退した。最後にインフレ率は、雇用の伸びが鈍化しているにもかかわらず、再び上昇の兆しを見せた。

しかし、悪いニュースばかりではない。所得と支出の伸びは予想を上回った。それでもこのデータでは、投資家の懸念を弱めるには足りなかった。

インフレ傾向は収まったか?

こうした懸念や、8月中の市場パフォーマンスの低迷にもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)が一時的に利上げを見送るのではないかという期待から、8月末にかけて市場は少し上昇した。

金利は、世界の中央銀行首脳が8月末に集まったジャクソンホール会議に先立って上昇し、特にジェローム・パウエルFRB議長が8月25日に基調講演を行なった後に上昇したが、その後は戻している。

インフレ率はわずかに上昇しているが、データを深く分析すれば、その傾向は落ち着いてきているはずだ。成長率は鈍化しているが、経済は成長している。成長の鈍化は、インフレにとっては良いことだ。進歩は遅くなっているかもしれないが、我々はまだ前に向かって進んでいる。

全体像、リスクはあるが見通しは明るい

いくつかの側面で弱含みになっているとはいえ、8月のニュースはまずまずだった。経済は成長し続け、より多くの人々が職を得、働き、消費した。インフレ率はまだ高いが、正しい方向に向かっている。FRBはインフレを警戒しているが、利上げは終わりに近づきつつある。先の見通しは明るい。

もちろん、リスクはまだ残っている。最大の米国内でのリスクは、インフレ率が再び急上昇することだ。これがさらに金利を上昇させ、FRBに利上げを続けさせる可能性がある。

米国だけでなく、ウクライナの戦争や中国のようなワイルドカードもある。まだ見えていないリスクは常に存在するため、保証されたものは何もない。

それでも、ファンダメンタルズは健全だ。経済は減速しているかもしれないが、成長は続いている。最大の問題であるインフレ率も低下傾向にある。秋に向けて、我々は良い立ち位置にいる。

forbes.com 原文

翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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