働き方

2023.09.13 07:00

成長の技法 リフレクション

このように、リフレクションとは、優れて有効な技法であるが、しかし、ただ「振り返り」を行えば良いわけではない。この技法においては、実は、「リフレクションの視点」が極めて大切である。
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例えば、商談がまとまらなかったとき、「価格が高かったから」という視点で振り返るのと、「自分が商品の魅力を上手く説明できなかったから」という視点で振り返るのでは、学びの深みが全く違う。

その意味で、リフレクションにおいては、経験を積んだ熟練の先輩や上司が、広い視野から、深い視点での助言を行うことが望ましい。

ただ、残念ながら、そうした助言があっても、なかなか、適切な振り返りができない人材がいる。
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実は、そのほとんどは、自身は気がついていないが、心の中の「小さなエゴ」が邪魔をしており、こうした人材は、実力に比べてプライドが高いため「自分の非を認めたくない」という思いが強く、振り返りを行っても、必ず、「時間が足りなかった」「部下が動いてくれなかった」など、自分以外に原因を求め、言い訳に終始する傾向がある。

こうした人材は、その「小さなエゴ」のため「大きな成長」「大きな飛躍」の機会を逸しているのだが、この人材が、チームのリーダーの立場にあると、本人の成長が止まるだけでなく、チーム全体の成長が止まってしまう。何故なら、リーダーの「心の姿勢」は、しばしば、そのチームの「空気」に悪しき影響を与えてしまうからである。

逆に、謙虚にリフレクションを行い、自身の至らぬ点を反省し、日々、自身のスキルとマインドを高めながら成長を目指していくリーダーは、自然に、そのチームの中に「成長の空気」を作っていく。

しばしば、「部下が成長しない」と嘆く上司がいるが、その前に、「はたして自分は成長しているか」と自身の姿を見つめてみるべきであろう。

そのとき、「部下の姿は、上司の心の鏡」という言葉が、深く心に響いてくるだろう。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。学校法人「21世紀アカデメイア」学長。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。全国7800名の経営者やリーダーが集う田坂塾塾長。著書は『成長の技法』『教養を磨く』など100冊余。

文=田坂広志

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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