ノルウェーのエネルギーコンサル会社Rystad Energyは、主にディーゼルで走るノルウェーのバスやトラックの燃料需要は、2010年から2015年にかけての日量約3万バレルから、2022年には日量3万2000バレルへと増加し続けたとみている。それらの車両が電動化されるまでは、ディーゼルや石油に対する需要はしつこく残るだろう。
運輸部門の電動化を目的とした政府の政策は往々にして大型車より乗用車に焦点を当てているため、ノルウェーの状況は他国にもそのままあてはまる可能性がある。
バスや貨物トラックの電動化を主に阻んでいるのはバッテリーの重量だ。車両が重すぎると、内燃機関搭載車と同じような性能を発揮できない。テスラやボルボなどの自動車メーカーがこの問題に取り組んでいるが、石油と同様のパワー確保は難題だ。
重要なのは、欧州や中国、米国など巨大な市場でEVが急速に普及しているにもかかわらず、石油消費量を大幅に減らすには何年もかかる可能性があるということだ。
貨物船や航空機の脱炭素化はさらに難しく、石油は石油化学製品やプラスチックの原料であるという事実も相まって、世界の石油需要がすぐさま急減するとは考えにくい。
石油需要のピークは2020年代後半と見ている国際エネルギー機関(IEA)などが、非常に長い間、需要の横ばいが続くと認めているのはそのためだ。石油輸出国機構(OPEC)は2045年の日量約1億1000万バレルがピークと見ている。この量は現在の需要より約1000万バレル多い。
だからこそバイデン米政権は国内の膨大な石油・天然ガス資源への継続的な投資から遠ざかるよう誘導してはならない。バイデンはEVが即座に米経済の脱炭素化を進めると考えているようだ。バイデン政権は事実上、2032年までに新車の小型車から排出される温室効果ガスを70%削減することを義務づけることでICE車を禁止しようとしている。
だがノルウェーが示すように、この考え方には無理がある。米国と世界の経済は今後何十年もの間、石油製品を必要とし続けるだろう。
過剰な規制やパイプラインのような新しいインフラの建設阻止、あるいは最近の連邦政府による石油・ガス開発リース権販売の中止によって、国内の石油生産を妨げることは近視眼的だ。問題を取り違えている。
今後数年間、EVが米国でさらに浸透しても石油の需要が高いのであれば、高い金を払って他国から石油を輸入するのではなく、国内生産して確保する方が賢明かもしれない。
(forbes.com 原文)