運動のアルツハイマー病予防効果、仕組みをついに解明か

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運動がアルツハイマー病のリスクを減少させる要因が、ホルモンのイリシンにあることが分かったとの研究結果が、米マサチューセッツ総合病院の研究チームにより発表された。

イリシンは、運動中に体内を循環するホルモン。学術誌Neuron(ニューロン)で8日に発表された論文によると、このホルモンが、アミロイドβ(ベータ)と呼ばれるタンパク質の脳細胞への沈着を抑制することが分かった。アミロイドβの沈着により脳内に形成されるプラークは、アルツハイマー病の主な症状の原因とみられている。

研究チームは、アルツハイマー病の3次元(3D)細胞培養モデルを作成し、そこにイリシンを加えた。結果、イリシンが「ネプリリシン」という酵素の活動を促進し、これがプラークとアミロイドβ沈着の「顕著な減少」につながることが分かった。

運動がアルツハイマー病のアミロイドβ沈着を減少させることは以前から知られていたが、そのメカニズムははっきりしていなかった。英アルツハイマー病協会によれば、定期的な運動は認知症発症のリスクを約30%減少させることが分かっている。特にアルツハイマー病(アルツハイマー病は認知症の一種)は、45%のリスク減少につながるという。

アルツハイマー病のリスクを減らす活動は、運動以外にもある。オーストラリアと米国の研究チームが7月に発表した研究結果によれば、パズルやカードゲーム、チェス、成人向け講習の受講など、認知機能を積極的に使う活動をすることで、70歳以上の認知症発症リスクを11%減らすことができるという。

また米食品医薬品局(FDA)は7月、世界初のアルツハイマー病治療薬を正式承認した。バイオジェンとエーザイが開発した「レカネマブ」と呼ばれるこの薬は、脳のプラークを除去することによって認知症の進行を遅らせられるとされるが、その安全性を懸念する声も出ている。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛・編集=遠藤宗生

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