米CNNなどは7日、今月発売されるマスクの伝記本にある記述として、ウクライナ軍が昨年、南部クリミア半島のロシア海軍艦隊に対して潜水ドローンでの奇襲攻撃を進めていた際、マスクがそれを妨害するためにスターリンクへの接続の切断を技術者らに指示したと報じていた。
マスクはこの攻撃を旧日本軍による真珠湾攻撃になぞらえ、ロシアの黒海艦隊への攻撃が実行されれば「ミニ・パールハーバー」になると主張。ロシアの激しい報復を招き、核戦争につながるおそれもあると懸念を示したという。
マスクはロシアが昨年2月にウクライナに全面侵攻した直後に、スターリンクをウクライナに無償で提供していた。
マスクは8日、オーナーで会長を務めるX(旧ツイッター)に、問題のエリアでは「スターリンクはそもそも有効化されていなかった。スペースXは何も無効化していない」と投稿し、疑惑を否定した。
マスクによれば、ウクライナ側からクリミアの港湾都市セバストポリまでスターリンクの通信を有効化するように要請されたが、スペースXは拒否した。もし自身が要請に応じていれば、スペースXは「重大な戦争行為と紛争の拡大に加担する」ことになっていただろうと説明した。
マスクはさらに、戦争が続くほど「国土のわずかな獲得や喪失のためにウクライナとロシアの若者がますます多く死ぬことになる」と書き込んだ。両国の「国境線はほとんど動かなくなっている」と主張し、それを少しでも動かそうと戦い合うことは「若者たちが命をかけるのに値しない」と断じた。
これ以上、人命が失われないように「双方は停戦に合意すべきだ」とも主張し、「希望的観測をしたところで戦争に勝てるわけではない」との考えも示した。
ウクライナ側は、和平交渉に臨んだりロシア側に譲歩したりする案をほぼ否定している。ロシア軍がウクライナ各地で行ってきた数々の残虐行為や戦争犯罪の疑惑に対する強い怒りが広がっているほか、ロシアが歴史的に、和平協定を結んでも自らの目的に都合のよいときに反故にするのを繰り返してきたことへの根深い不信感があるためだ。
マスクがウクライナとロシアは戦争をやめ、妥協すべきだという考えを示したのは初めてではない。昨年10月には、ツイッター(当時)で戦争終結に向けた独自の和平案を披露した。
この案はロシアが2014年に違法に併合し、現在も支配するクリミアを正式にロシア領として認めることや、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟せず中立を保つと確約することなどが盛り込まれ、ウクライナ側にとってロシア側への大幅な譲歩となる内容だったため、ウクライナの高官や西側諸国の政治家らから激しい非難を招いた。
(forbes.com 原文)