脳内で作られるタンパク質の一種「アミロイドβ」が蓄積されることで、アルツハイマー病が発症するとされており、アミロイドβが脳内にどれだけ蓄積され分布しているかを把握することで、早期に発見することが重要。そのために、アミロイドβに結合する磁気粒子を体内に注入して検出する「磁気粒子イメージング装置」が必要とされてきたが、磁場を発生するためにはかなりの電源容量が必要で、非常に大型化してしまうことが難点とされてきた。
そこで三菱電機と岡山大学、大阪大学は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、脳のみを検査できるサイズにし、1kHz以下の低周波でも高感度に撮像できる磁気粒子イメージング装置を開発。装置の小型化に成功した。
交流磁場の周波数が高いほど、磁気信号を高感度に検出できるため、これまでマウスなどの小動物用の小型装置でも、25kHz前後の高い周波数が必要だった。このまま、脳が撮像できるサイズに大型化した場合、より大きなコイルが必要となるため負荷が増加し、電源容量が増大するため実用化を難しくしていた。
そこで、交流磁場を発生するコイルと信号検出コイルの配置を精密に調整し、磁気信号の検出の障害となるノイズを最小化させ、1kHzという低周波でも高感度に撮像を可能にした。これにより、電源装置も大型化せずに済むため装置の実現化に至っている。
三菱電機は、今後より高感度化、高解像度化を目指し、安全性や有効性を確認するため、臨床試験を行っていくとし、2030年頃の実用化を目処に開発をしていくという。
今年8月に、アミロイドβを除去し、病状の進行を抑制する治療薬の製造販売承認が厚生労働省の専門部会で了承されており、アミロイドβが少ない早期の段階で投薬治療が開始できれば、発症抑制につながると期待されている。こうした装置が実用化されれば、より精密な診断につながり、早期発見に役立つはず。少しでも早く実用化してほしい。
プレスリリース:三菱電機「ヒトの脳サイズの撮像が可能な「磁気粒子イメージング装置」を開発」より