米エネルギー省は9月7日、企業や研究者の地中水素の掘削プロジェクトを支援するために2000万ドル(約29億円)の基金を設立すると発表した。ビル・ゲイツのブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)が支援するKoloma(コロマ)社や、オーストラリアのHyTerra(ハイテラ)社、Natural Hydrogen Energy(ナチュラル・ハイドロジェン・エナジー)社などの野心的なスタートアップは、地中水素の商用化を目指し、カンザス州やネブラスカ州などの中西部の州で試験掘削を行っている。
「この分野には巨大なチャンスがある。我々は、地質水素にアクセスし、そのポテンシャルを探るための画期的な方法を見出そうとしている」と、エネルギー省のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)のエブリン・ワン所長は、Eメールの声明で述べている。
フレキシブルでクリーンなエネルギー源である水素は、電気自動車(EV)や石油の精製や肥料、化学薬品の製造などさまざまな分野で使用されている。しかし、現状では水素は主にCO2を排出するプロセスで作られ、コストが高いのが難点だ。そんな中、米国政府は石油・ガス産業が長年培ってきた掘削テクノロジーを活用し、低コストで掘削できる地中水素に注目している。
地下深くの自然なプロセスで発生する地中水素は、鉄を多く含む鉱物と、水と熱の化学反応によって生成されるという説が有力だ。地中水素は、アメリカ中央部を走るミッドコンチネントリフトなどの断層付近でよく発見され、米地質調査所の初期の推定では、非常に豊富であることが示唆されている。
ARPA-E のプログラムディレクターのダグ・ウィックスは、今年初めのフォーブスの取材に対し、世界には最大1億5000万トンにもおよぶ、天文学的な量の地中水素が眠っている可能性があると述べていた。
デンバーを拠点とするコロマ社の共同創業者でCEOのピート・ジョンソンは、7月のフォーブスの取材に「地中水素は、未来のエネルギーになると信じている。エネルギー省がこの可能性を認めてくれたことに感謝し、この画期的な資源開発に協力できることに感激している」と述べていた。
(forbes.com 原文)