2023.09.10 12:00

日本車離れのルックス「新型ホンダZR-V」は日本にピッタリ

坂元 耕二
ZR-Vは、ホンダのファミリーカーであるシビックや、CR-Vと足回りを共有している。シビック同様、ZR-Vは2.0リッターガソリンエンジン、2つの電気モーター、小型バッテリーを搭載する。プラグインハイブリッド(PHEV)バージョンは予定されていないらしい。

パワーは十分だし、ドライビングフィールは極めて素晴らしい。最高出力141psと、最大トルク182Nmを生み出す直噴エンジン、および184psと315Nmを発生する駆動モーターのスペックは「シビックe:HEV」と同一だ。

多くのハイブリッド車とは異なり、エンジンが車輪を直接駆動することはほとんどない。通常は電気モーターがそれを行い、エンジンは発電機として機能し、必要なときにバッテリーを充電する。つまり、航続距離や充電を気にすることなく、電気自動車のような瞬発力を得ることができるのだ。


思いきり回したときの滑らかさや、生き生きとした加速が気持ちいい。ZR-Vは、低速であまり勢いよく走らないときは静か。で、シングルスピードのオートマチック・トランスミッションがハイブリッド・システムとの相性がよい。しかし、高速走行時にはロードノイズが室内に多少響き渡り、風切り音はフロントガラスのAピラーやドアミラーを通過していく。

さらにシビック同様、ZR-Vもアクセルを深く踏み込めば、まるでDCTを積んだエンジン車のように軽快に回転が上がり、そこで変速したようにいったん下がってまた上昇、といった上下動を繰り返すように制御され、その際にはデジタルメーターの左側のパワーメーターも、タコメーターのように動く。

ガソリンターボ仕様と、このハイブリッド車の差は100kgあるが、後者のフットワークは軽快で、エンジンとモーターのレスポンスが小気味よくリニアなおかげで、山道やワインディングでは印象がいい。面白いことに乗り心地も重いハイブリッドのほうが落ち着いた感じだが、荒れた路面ではブルブルとした振動が残ることもある。

いかつい本格的クロスカントリータイプでもなく、かといってクーペのようなスタイリッシュ志向でもない、どこか捉えどころのないスタイリングに対する好みを脇におけば、ZR-Vは日常的に使うのにちょうどいい、かつ気持ちよく走ることもできるSUVである。

いや、SUVというジャンル分けがそのキャラクターを曖昧にしているのかもしれない。ブレッド&バターカーはもはや死語だが、肩ひじ張らずに気持ちよく使える実用ハッチバックと考えれば、これぞ現代におけるシビックなのかもしれない。

多くのユーザーにとって気になる燃費は22km/Lなので、SUVのセグメントではかなり良い方だ。リアの視界、風切り音などが多少気になるけど、やはりトータル的に、この新鮮なデザイン、スポーティな乗り味、そして快適なハイブリッドのパワートレーンの走りは高く評価する。これは正直なところ、329万円からの価格設定はぴったりで、魅力だと思う。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事