こうした出張では普段の環境から引き離され、まったく新しい見解や視点に触れることができるので今回も非常に楽しみにしていました。
もちろん、出張の主な目的は日本のスタートアップエコシステムの魅力を伝えることです。しかしそうは言っても情報の流れは双方向ですので、会う人それぞれから多くのことを学ぶ機会があるのです。
例えば、他のスタートアップエコシステムはこの景気低迷をどのように乗り切っているのか。
以前は「ホット」だと言われていたスタートアップやVCファームの中で、どこが今も勢いを保っていて、どこがそうでないのか。
そして特に気になるのが、世界の起業家や投資家が今の日本をどのように見ているのかという点です。
海外のスタートアップがこの景気低迷をどのように乗り切っているかという点に関しては、端的にまとめると「持つ者と持たざる者」で二極化しているようです。
「潮が引いて初めて、誰が裸で泳いでいたかわかる」という投資家ウォーレン・バフェットの名言がありますが、潮が引いた今、まさにそのような状況が浮き彫りになっています。
過剰に持ち上げられ、高騰した評価額で多額の軍資金を獲得した企業は数多く、VCの帳簿上のリターンも押し上げていました。
しかしその多くは評価額に見合う指標に到達していなかったり、中にはプロダクト・マーケット・フィット(PMF)すら達成していない企業もあったのです。
PMFをすでに達成していた企業にとっても、次の資金調達が必要になる前にその高い評価額にまで成長できるのかという点が大きな課題となっています。
中には多額の資金を調達できたおかげで、バーンレートを抑えれば何年も持ちこたえられる余力のある企業もあります。そうした企業ならこの景気低迷もそのまま乗り越えられるかもしれません。
一方で、そのような余力のない多くの企業は、評価額を下げたダウンラウンドか、もしくは既存株主にとって大きなリターンがほぼ期待できなくなるような不利な条件を盛り込んだラウンドでの調達をせざるを得なくなっています。
もっと深刻なケースでは、すでに解散してしまった企業もあり、今後も同じ結末を迎える企業が出てくるでしょう。