低価格MacBookは作ることはできるのだろうか。2020年に発売したM1チップセットをベースに、128GBのSSDと市販の液晶ディスプレイを載せ、ボディに安価な素材を使えば、799ドル(約11万8000円)とはいかないまでも、899ドル(約13万円)のMacBookは十分に作れるだろう。
作るべきなのだろうか。それはもっと大きな問題であり、現時点で私の答えはノーに近い。
最大のリスクはアップルのブランドに対するものだ。かつて、価値提案を前面に押し出した「安価」なプロダクトは存在したが(iPhone 5Cがすぐに思い浮かぶ)、アップルの魅力は、排他的集団の一部になり、標準以上のものだというプロダクトの夢を信じ、自分が最高品質の製品を購入していると感じることにある。
「お手頃なMacBook」をうたいながら、そんなことはできるのだろうか。アップルは12インチMacBookで試したことがある。2015年に発表され、4年間だけ製品ラインナップに入っていた。その後、同様のプロジェクトがより多くの支持を得ることができるようになったのだろうか。
MacBookファミリーの市場は、入門レベルが999ドル(日本では税込13万4800円)ということで落ち着いている。アップルはM2 MacBook Airでベースモデルを1199ドル(日本では税込16万4800円)に値上げしたが「999ドルから」という心理効果を維持するためにM1 MacBook Airの販売を継続している(あまり知られていないは、学生・教職員価格と学生割引で100ドル安くすることができる)。
2022年のアップルは、最低価格を上げる準備ができていなかったために、その価格帯が維持されていた。同じ理屈は他のプロダクトにもあてはまる。最低価格を変更すると、はまずMacBook Airの価値が下がり、次にMacBookシリーズ全体、さらにはMacシリーズ全体の価格も下げることになる。
いずれにせよ、もし999ドルより安価なアップル製コンピュータを探しているのであれば、ティム・クックと彼のチームはその答えを持っている。それはiPadと呼ばれている。
(forbes.com 原文)