それは、大企業と中小企業と個人と、それぞれの立場でSDGsに対する取り組み方や進み具合が異なっているということ。中小企業にとって、大きな投資や人的リソースをかけてまで、SDGsに取り組みにくい、忙しくてそんな暇がない、というのが実際の現実的な本音だと思います。
そこで、今回は、持続可能な経営で必須となるSDGsの現状について事例を交えながら、低コストで労力をかけず、しかも経済的なメリットがある形で、どう取り組んだらいいのかについて考えてみたいと思います。
企業哲学が垣間見える、SDGsの取り組み事例
身近なところで食に関するSDGsの実例を挙げてみましょう。「明治乳業」では、「美味しいサステナブルキャンペーン」で、これまでプラスチック製だった牛乳パックをサトウキビ由来のバイオプラスチックに切り替えました。さらに、賞味期限の表記を思いきって変えたのです。製造日を含む19日以上、と大胆にこれまでの延長期間から長く期限を宣言。主力商品の牛乳を大きな柱として、食品ロスを削減する方向性で、本格的にSDGsへの道を歩み出すきっかけを作ったと思います。ポカリスエットでおなじみの「大塚製薬」は、「捨てるという概念を捨てよう」と掲げ、プラスチック容器を再生可能な飲みきり250mlのエターナル瓶に変えました。極力、小売店で瓶を回収して、工場に戻して再利用する、手間のかかるプロジェクトですが、このエターナル瓶が思わぬ話題を集めたのです。
少しレトロでおしゃれな瓶の見た目から、Z世代を中心にSNSで取り上げられ、その結果、多くの年代からの認知度を高める2次現象が起きたそうです。SDGsの取り組みで始めた働きかけが、意外なPR効果という副産物を生み出したわけです。
一方、「森永製菓」のチョコレート製品は、順次、認証カカオ豆の使用に切り替わりました。これは、一見簡単な取り組みに見えますが、カカオ農家に正当な報酬を渡せるばかりでなく、カカオ栽培に於ける森林伐採や児童労働を防止するシステムにも繋がっているのです。
このように、SDGsをきっかけとして、自然環境や人権保護といった分野にも波及してくるのは、本来持つSDGsの意義をより深いものにしている好例だと思います。
さらに、スーパーマーケット及び輸入食材を展開している「成城石井」が運営するレストランでは、特定のロカボメニューを注文すると、発展途上国に20円が寄付される仕組みがスタートした時に話題を集めました。この20円とは、重要な意味を持っていて、20円は発展途上国の給食1食の代金。つまり、先進国の誰かが1食とるごとに途上国の誰かに1食贈られる、table for twoの構造が実現したのです。
このように、食を軸に考えた場合、パッケージや食材や外食などを介して、SDGsの可能性は、かなり広がってきているように見えます。