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2023.09.11 08:00

累積総リターン316%の米投資会社。次の商機は「スポーツビジネス」

Forbes JAPAN編集部

投資会社アレス・マネジメントの共同創業者兼会長のトニー・レスラー(中央)(Derek White / Operation HOPE, Inc. / Getty Images)

複利利回りの価値を説いてきたアレス・マネジメント。緻密な資産運用戦略で実績を重ねてきた同社が、「スポーツビジネス」に注目する理由とは。

米資産運用会社「アレス・マネジメント」のマイケル・アルゲティCEO(50)は、少年時代に野球カードのトレーディングで、ビジネスのコツを覚えた。希少価値が高いカードを狙うより、小さな利益を積み重ねるほうがよい戦略であることに気づいたのだ。

アレスの運用資産は3520億ドルで、そのうち2140億ドルは、信用リスクが高い非上場企業に直接融資する「プライベートクレジット・ファンド」に用いている。同社は、競合他社のように株式投資で巨大なリターンを狙うのではなく、収益の大半を金利収入から得ている。「私たちは、複利利回りの価値を早くから説いてきた」とアルゲティは話す。同社は2022年9月までの5年間で、累積総リターンは316%にも達する。

アレスの会長で、NBA(全米バスケットボール協会)チーム「アトランタ・ホークス」の過半数オーナーでもあるアントニー・レスラーが会社を立ち上げたのは1997年のことだが、現在の事業の基盤は、アルゲティと彼のチームが04年から05年にかけて構築したプライベートクレジット事業にある。当時の機関投資家は、投資銀行が企業の借り入れをまとめてパッケージ化したファンドに投資していたが、アレスは中間業者を排除して直に企業と取引し、彼らの財務ニーズに応じた融資を提供した。

アレスの金融商品のほとんどに、借り手の資産を担保とする上位債権の変動金利ローンが含まれており、この安定性が、変化の激しい市場で同社の繁栄を支えている。同社は21年に770億ドル、22年にさらに570億ドルを調達。0.35〜1.5%とされるクレジット・ファンドの管理手数料による収入は、過去3年間で21億ドルに倍増した。

それに加えてアレスは、不動産やインフラ、プライベートエクイティなどの分野でも1380億ドルの資産を運用している。このなかには、企業再編に投資する55億ドルの「スペシャル・オポチュニティ・ファンド」が含まれており、破産した通信会社「フロンティア・コミュニケーションズ」やレンタカー「ハーツ」への“賭け”で19年以降、ファンドは毎年25%のリターンを上げている。

スポーツやメディア関連企業にも37億ドルを投資し、F1チームのマクラーレンを含む19社の少数株を保持している。その理由についてアルゲティはこう説明する。「コンテンツの価値は高まっています。スポーツ中継ほどユニークなコンテンツはないのです」


マイケル・アルゲティとアントニー・レスラー◎金利収入で収益を上げてきたアレス・マネジメント共同創業者のマイケル・アルゲティCEOと、アントニー・レスラー会長。レスラーがNBAアトランタ・ホークスのオーナーを務めているほか、別のアレス共同創業者ベネット・ローゼンソールも米プロサッカーリーグMLSの「ロサンゼルス・フットボール・クラブ」を所有するなど、創業者たちはプロスポーツに強い関心を寄せている。

文=ハンク・タッカー 写真=グエリン・ブラスク 編集=上田裕資

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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