本書では、『シン・エヴァ』制作の費用や工程、体制や制作環境といった情報を、図版を交え具体的・網羅的に記録。また庵野秀明総監督をはじめとする関係者へのインタビューも収録され、コストやリソース、スケジュールといった制約があるなか、どのような考えをもとにヒットを目指した作品づくりが行なわれたかなど詳述されている。
この書籍を企画・執筆したのが、『シン・エヴァ』制作では主にAパートの制作進行を務めた成田和優氏だ。なぜ『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン』をつくったのか、そして本書に込められた思いとは。成田氏に話を聞いた。
──『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン』を制作するに至ったきっかけを教えてください。
成田氏:当初、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の劇場公開は2020年6月に予定されていたのですが、新型コロナの感染拡大の影響で延期となりました。その結果、映画制作も体制の見直しなどによりスローダウンし、それまでから比べると時間のゆとりが生まれたんです。そんななか、今回の書籍のアイデアを着想しました。
これだけ多くの、しかも一流の才能をもった人たちが多大な労力と時間をかけて、クリエイティブや技術の粋を集めて作品を生み出している。もちろん作品自体がいちばん大事なのですが、これだけの人が関わって作品がつくられたという記録は、残す価値があるのではないかと。そしていかにして作品が生み出されたか、多くの人に面白く読んでもらえるのではないかと思いました。
そこから企画書を作成し、2020年8月に庵野秀明総監督にメールで提案したところ、即座に「良いかと思います。進めてください」と制作のOKが出ました。本来、私は制作進行という役割なので企画をする立場にないのですが、カラーという会社(編集部注:『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』などを制作する映像企画制作会社。庵野秀明氏が代表取締役社長を務める)が「企画や提案はオープンにいつでも受け付ける」という社風なこともあり、社内の方々に相談しながら企画内容も整えていくことができました。その後、映画制作の追い込み時期を経て、2020年末から本格的に書籍の制作に着手しました。
企画から執筆までを手がけましたが、書籍の制作の経験がない人間にそれをさせてくれるというのは、本当に稀有なことだと思います。それは、庵野さん自身が映画の自主制作からキャリアをスタートさせている、未経験でもやってみればいいのではないかという、カラーのもつ精神性ゆえだと思っています。