『世界と私のA to Z』の著者で、XGへの取材者であり、「30 UNDER 30 JAPAN 2023」受賞者でもある25歳のライター・研究者、竹田ダニエルが考える現在とこれからの「成功」の定義とは何か。
成功とは、いったい何だろうか。社会的な名声を得て、巨額の富を築いて、資本的な意味で裕福になれば、「成功」なのだろうか。現代の資本主義社会というラットレースで「勝利」することが、本当の意味での人生の豊かさを定義するのだろうか。
いま、私たちはこの「成功」の定義を、あらためて考える必要性に迫られている。米国ではさまざまな業界で歴史的に大規模なストライキが発生し、労働者たちが劣悪な労働環境やアンフェアな賃金システムに対して声を上げている。コロナウイルス、経済不況、気候変動等により不安定さが際立つ現代社会において、若者世代の価値観は変容しているのだ。
私は著書『世界と私のA to Z』で、「Z世代の働き方」についてこう書いた。“「今時の若者は辛抱が足りない」とか「メンタルが弱い」と言う大人は日本でもアメリカでもたくさんいるが、実際にその「辛抱」や「メンタルの強さ」は必要なのだろうか?健康や幸福を害してまで、資本主義に迎合するために仕事に全てを捧げる必要性は、いったいどこにあるのだろうか?”
自分のライフを削ってまでいまの社会に迎合し、「成功」を得ることの幻想をZ世代は見られなくなった。なぜなら、輝かしい未来はうそだと理解したからだ。かつては昇給や豊かな家庭、充実した老後も、「仕事を頑張り、成功を定める指針」の一種だったかもしれない。しかし、いまでは10年後、もしくは5年後さえ、どのような社会になっているかさえ予測できない。
未来の希望に期待できなくなった分、「いま、この瞬間」で幸せを感じられるかが重要になってきているのだ。少なくとも「いまという現実」、つまりは目標達成までの段階を受け入れられなければ、どんなに「成功」を成し遂げたとしても、不足している点を探してしまうだろう。「いま、この瞬間」で幸せを感じられる練習をすれば、成功に幸せを依存させずとも、自分で満足感、喜びを生み出すことへとつながる。