宇宙

2023.09.09

「西村彗星」観測の注意点 肉眼で見るのは困難に

Getty Images

肉眼で見える彗星の到来は心を躍らせるものだが、先日新たに見つかった「西村彗星」の可視性に関する報道をうのみにしてはいけない。

たとえば英紙インデペンデントは5日、西村彗星は「日の入り後の1時間と、日の出前の1時間、東北東の空で三日月と金星に向かっていくところが見える」と書いているが、これは半分しか正しくない。

西村彗星は現在、しし座の中、より具体的にはしし座の頭の中にいる。しし座の頭部が見えるのは明け方だけで、日の出の約1時間前、東北東の空に、金星と共に昇ってくる。しかし、西村彗星はライオンの頭から体に向かって非常に高速で動いており、間もなく地平線の下に消えてしまう。

地球に最接近する9月12日ごろから、太陽に最接近する9月17日まで、肉眼で見えるかもしれない明るさになると予測されている。しかし、その期間は、明るい黄昏に紛れて非常に見えにくい。さらには、彗星は太陽の近くを無傷で通過できかもしれない。大幅に明るさを失ったり、最悪の場合、太陽の熱で完全に消滅してしまったりする可能性もある。

つまり、厳密には肉眼で見える明るさを保っている間には、夜空高くに昇って実際に肉眼で容易に見える状態にはならないのだ。期待できるのは、日没後の西の地平線近くでその姿を垣間見ることくらいだろう。その場合、双眼鏡を使うのが賢明であり、大きな忍耐も必要だ。

西村彗星は日本のアマチュア天文家、西村栄男(ひでお)さんが8月13日に発見し、8月15日に国際天文学連合小惑星センターが「C/2023 P1 (Nishimura)」として公表した。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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