「自分にできるとは思っていなかった」
DXはITの専門家であるDX人材を採用すれば実現できるわけではない。全社員がデジタル技術の本質を理解し、自らの業務にそれがどのように役立つのかを主体的に考える土壌を作ることが成功の秘訣だろう。テクノロジーの進化によって、ITの専門家でなくても事業部門の現場社員がデジタル技術を用いたアプリケーションを構築できるようになった。2社の事例でも、自分たちの業務アプリケーションを自ら作成していることを紹介した。実際に取り組んでいる人に話を聞くと、みな「自分にできるとは思っていなかった」と口を揃える。これは組織の土壌に大きな変革を生み出す。
具体的な取り組みは以下のとおりだ。
•デジタルに詳しいアンバサダーの設置
ビジネス部門において、デジタル技術に詳しい人やデジタル技術で何が実現できるのかを理解している人を配置する
•ワークショップや質問会の開催
業務においてどのようにデジタル技術を利用すべきかを実際にワークショップで体験することで、自分にもできるという意識を浸透させる。また、現場から気軽に問い合わせることができるように質問会を設置するなどの活動を継続する。この取り組みはアンバサダーの育成にもつながる
•IT部門によるサポート
IT部門は現場部門で取り組まれた事例を社内に展開するためのハブとなり、デジタル化の取り組みが共有される仕組みを構築し運営する。また、そのためにノーコードツールなどのプラットフォームを整備する。
こうした取り組みにより、確実に現場におけるデジタル技術の活性化、すなわち「デジタルの民主化」は進展することだろう。
このような状況は専門家でなくてもデジタル技術を活用できるようになったということにとどまらない。