映画

2023.09.07 17:00

「無関心に無自覚」な態度へ「居心地の悪さ」を

イラストレーション=エドワード・タックウェル

普遍性を追求する力

──番組視聴者や映画の観客からはどんな反応がありましたか?
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佐井:「いったい何を観せられているんだろう」という反応は多かったです。これもまさに現代人のムードそのものだと思うのですが、今はテレビ番組でもYouTubeでもTikTokでも「得るべき情報がパッケージングされている」ことが前提になっていて、人々はそれを当たり前のように受け取っている。ところが、僕の作品を観ると「?」しか浮かんでこない。

──まさに「居心地が悪い」。

佐井:それはシュガーコーティングされた気持ち良い情報の取得ではなくて、自分のなかに浮かび始めた「?」をきっかけに、何かを考え始めているということですよね。このザラついた感じをずっと提示していきたいです。
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ドキュメンタリーの正攻法は「取材したいものを取材しつくす」ということだと思いますが、僕は取材をする中で絶えず揺れ動く取材対象や状況のみなも「水面」を映し取っていきたい。

──最新作は、謎の集団「イエスの方舟」を扱った「方舟にのって〜イエスの方舟44年目の真実〜」。佐井さんの持ち味は、過去から現在へのまなざしにありそうです。

佐井:過去を探れば、現代が浮き彫りになる。そして普遍が見えてきます。テレビの時代が終わったといわれて久しいですが、トレンドを追うだけのテレビの時代が終わったんです。

寺山修司、小津安二郎、山田太一。僕の好きな作家たちは現代に通用する普遍性、本当のクリエイティビティを教えてくれます。これからの時代に必要な強さとは、普遍性を追求し続ける力だと思います。


さい・だいき◎1994年生まれ。2017年TBSテレビ入社、ドラマ制作部所属。連続ドラマのプロデューサーを務める傍らドキュメンタリーを監督し、『日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜』『カリスマ〜国葬・拳銃・宗教〜』「方舟にのって〜イエスの方舟44年目の真実〜」などの作品がある。

文=谷村友也 イラストレーション=エドワード・タックウェル

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