生産コストは実質ゼロ、夢のバイオ燃料が目指す未来

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水中にいる光合成をする微生物、微細藻類がいろいろな社会問題を同時に解決してくれるかもしれない。魚の養殖用飼料、肥満やがんを予防する医薬品、そしてバイオ燃料などなど、微細藻類には大きな可能性がある。ただし問題は培養の難しさとコスト。それを日本の企業が解決した。しかも、老化防止、肥満抑制、がん予防から育毛まで、さまざまな効果をもつ医療用成分を抽出した残りからバイオ燃料を実質コストゼロで精製するという、夢のような話が実現する。

バイオメディカル企業アルヌールは、微細藻類から「フコキサンチン」という稀少素材の抽出を行っている。老化防止、脂肪燃焼、がん増殖抑制、高血糖改善、アトピー性皮膚炎の治療、育毛などに効果があるとされ大いに期待されているが、天然の海藻などからはわずかしか抽出できず、そのために研究も進まない状態だった。しかしアルヌールが開発したバイオリアクターは、フコキサンチンを多く含む微細藻類の安定的な培養に成功し、藻類の医療活用に道を拓いた。

同社は医療のほかに、家畜の飼料やバイオ燃料の分野での微細藻類活用も目指している。これらバイオ分野の可能性を「同時並行的に達成」するのが、そのバイオリアクターということだ。とくにバイオ燃料は、これまで藻類の培養が困難であったことから採算が取れず普及が滞っていたのだが、このたび名古屋大学との共同研究により、フコキサンチン抽出後に残る脂質からバイオ燃料を精製することに成功した。

藻類からは多種類の稀少成分の抽出が行え、それらで収益が得られれば、その残渣から精製されるバイオ燃料は実質的に生産コストはゼロとなり、バイオ燃料製造コストの問題は一気に解決する。しかも、微細藻類は二酸化炭素を大量に吸収して酸素を吐き出すため「SGDsど真ん中の大きなおまけ」だと同社は話す。

アルヌールのバイオリアクターは屋内で微細藻類の大量培養ができることから、世界中のあらゆる地域でのバイオ燃料の地産地消を可能にする。同社はそれを「藻類によるバイオ燃料生産を唯一成功させるスキーム」と考え、開発を進めていくとのことだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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