その理由を説明しよう。化石燃料の主成分は炭素と水素、つまり炭化水素だ。炭化水素が燃焼すると、炭素はCO2を、水素は水蒸気を生み出す。石炭は石油や天然ガスよりも炭素の割合が高い。そのため、石炭を燃焼させると、石油や天然ガスよりもエネルギー単位あたりのCO2発生量が多くなる。
米エネルギー情報局(EIA)によると、石炭の燃焼はエネルギー100万BTU(英国熱量単位)あたり平均約100KgのCO2を排出する。これに対し、石油のCO2排出量は約73Kg、天然ガスは約53Kgだ。
つまり2022年には、100万BTUのエネルギーを消費するごとに石炭が26.7%×100Kg、石油が31.6%×73Kg、天然ガスが23.5%×53KgのCO2を排出した。
これら3つの化石燃料のCO2排出量に対する相対的な累積寄与率は、石炭43%、石油37%、天然ガス20%だ。
石炭はまた、発電所で燃やされる際に多くの有害物質を排出する。過去を振り返ると、石炭発電所は酸性雨の原因となる二酸化硫黄を大量に排出していた。規制によりこの問題は最終的に解決されたが、石炭火力発電所はいまだに水銀などの有害物質を排出している。また、環境に放出される放射性元素は原子力発電所より多い。そのため、石炭が環境に与える影響を抑制しようと多くの規制が可決されてきた。
石炭はさまざまな公害問題を引き起こすことから、ほとんどの先進国は石炭火力発電から脱却してきた。だが石炭は安価なため、発展途上国は電力源として石炭に大きく依存し続けている。発展途上国における石炭消費は現在、世界のCO2排出量増加の最大要因となっている。
石炭の消費量に目をむけると、過去10年間に先進国では減少した一方で、発展途上国で増加した。
経済協力開発機構(OECD)を構成する38カ国の石炭消費量は過去10年間で年平均3.9%減少。非OECD諸国では年平均1.4%増加した。
欧州連合(EU)の石炭消費量はOECDと同様に減少傾向にある。過去10年間、年平均4.2%の割合で減少した。だが2022年には増加に転じ、2%増となった。これは、ロシアのウクライナ侵攻を受けてEU諸国がロシア産の天然ガスを石炭に置き換えたためだ。
その結果、同年の世界の石炭消費量は過去2番目に多くなり、2014年の水準を0.01%しか下回っていない。世界中でCO2排出量を削減する取り組みが展開されているにもかかわらず、石炭消費量は過去最高水準にある。
石炭消費が最も多い10カ国のうち6カ国がアジア太平洋地域の国だ。中国は依然として世界の石炭消費量(および生産量)の大半を占めており、この傾向は今後も長年にわたって続く可能性が高い。次いで消費が多いのはインドだ。以下、米国、日本、インドネシアと続く。
石炭を大量に消費する大方の国は多くの石炭を生産してもいる。最大の例外はオーストラリアで、主要な石炭生産国でありながら消費量は14番目となっている。コロンビアもトップ10に入る生産国だが、消費に関しては50位に入る程度だ。
(forbes.com 原文)