CO2を9割減するバイオ燃料RDの仕組み 山岳地で走行試験開始

プレスリリースより

バスやトラックなど大型車両の脱炭素化で期待されるのは、EV、合成燃料、バイオ燃料などがあるが、どれも一長一短。そのひとつ、リニューアブルディーゼル燃料(RD)は、何かとメリットが多い次世代燃料として期待されている。このRDを使ったバスの走行試験が、乗鞍ライチョウルートにて行われた。山岳地でのRD走行は世界でも例がないとのこと。

RDはバイオ燃料の一種だが、原料は食用にもなる穀物ではなく、廃油などの廃棄物だ。食料か燃料かで穀物の取り合いになる心配がない。燃費は一般の軽油と同じぐらい。燃焼すると、やはり軽油と同じぐらいの二酸化炭素が排出されるが、原料の調達から製造工程、燃焼までを含めた総合的な排出量は軽油の90パーセント減となる。既存の車両や給油設備がそのまま使え、しかも、軽油のような刺激臭が少なく、煤が出ないため車両への負担やメンテナンスの手間も減るという、なかなか優秀な燃料だ。

長野県を拠点に燃料事業などを展開するヤマサは、8月1日、長野県松本市の乗鞍高原観光センターと、日本一の標高(2702メートル)を誇るバス停、岐阜県高山市の乗鞍岳畳平バスターミナルの間を約100分間にわたって走行試験を実施した。急峻な坂道が連続し、しかも冬はかなりの低温になる山岳地帯ではパワフルなディーゼルエンジンが頼りになる。試験では、乗鞍岳畳平バスターミナルまで見事に登りきることができた。運転手によれば、登坂や燃費に関しては問題ないとのことだった。
RDは排気の匂いも気にならない。

RDは排気の匂いも気にならない。


試験に参加した人からは「勾配のきつい山間部を上がっていけるパワーや、臭いやススのないクリーンさを体感し、RDの高いポテンシャルを肌で感じられた」との意見が聞かれた。ヤマサは「乗鞍の自然を守り、次世代へとつないでいく一助となれるよう、供給面、コスト面、法整備などの課題を乗り越え、RDの普及に向け尽力してまいります」と話している。

デメリットは燃料の価格。現在は、持続可能な航空燃料(SAF)やRDの世界最大手であるフィンランドのネステから輸入しているため、軽油の3〜4倍と高価だ。しかし、日本でも数多くの企業がRDの国産化を急いでいる。大手建築会社などは建設重機にRDを導入する動きがあり、西武バスは2022年にRDを一部路線で採用している。量産体制が整い価格が下がれば、さらにRDの普及が進むだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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