触感フィードバックUIをデザインするロンドンの「TG0」
European Innovation Council(EIC)は、域内に拠点を置く企業やスタートアップによる画期的な技術やイノベーションの支援を目的に欧州連合(EU)が設立したイノベーションプログラムだ。現在約6000社の企業が参加する。今年はEICの呼びかけに応じた20社が集まり、世界各国から多くのトレードビジターやプレス関係者が集まるIFAの会場にブースを出展した。なおEICの予算は101億ユーロで、初期段階の研究からコンセプトの実証、技術移転、スタートアップや中企業への融資とスケールアップにいたるまで多角的なイノベーション支援を行っている。
TG0は英国のロンドンに拠点を置く、2015年に創立したスタートアップだ。ユーザーインターフェースにハプティクス(触感フィードバック)を活かしたデバイスを、ソフトウェアからハードウェアのデザインまで一貫して提供できるところが同社の強みだ。
自社で開発したプロダクトである「eteeController」はハプティクスセンサーを組み込んだコントローラーデバイス。同社のジョー・ジョンソン氏は「SteamVR対応のヘッドセットをサポートしている。VR/ARエンターテインメント向けのコントローラーとしての使い道から、あるいは当社が提供するeteeController AdaptVR Kitにより、触感フィードバックを活かした医療や産業用シミューレーターの開発にも活かせる」と説明する。
eteeControllerはTG0が特許を持つ「Full-finger sensing technology」により、コントローラーを持つ手の5本の指それぞれにフィードバックを返せる特徴がある。会場ではPCの画面の中に描画されるオブジェクトを両手でつかみ、それぞれの指にフィードバックが感じられるデモンストレーションを体験した。eteeControllerはTG0のウェブサイトを通じて2023年秋から商品として販売を開始する。現在受注販売を開始した。価格は284ユーロだが、日本からも税込4万4900円で購入できる。
TG0は触感フィードバックを活かしたユーザーフェースをさまざまな形状、操作方法のデバイスに組み込むノウハウを持つ
TG0のサム・ピルキントン氏は、eteeControllerの商品化により、同社が強みとする技術を広く世の中に伝えたいと話す。「当社が得意とする触感フィードバックによるインターフェースは、自動車の車内空間やオフィス用のスマートデスク、ゴルフグリップなどスポーツのトレーニング用デバイスなどにも活かせる。さまざまな材質、形状のプロダクトを設計し、生産までのノウハウを当社から提供することも可能だ」(ピルキントン氏)
なお、同社によるOEMの実績には米Zwiftの触感フィードバックを搭載するゲームコントローラーもある。
TG0のジョー・ジョンソン氏(右側)とサム・ピルキントン氏(左側)