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2023.09.05 13:00

アップルの「修理する権利」の容認で噴出した賛否両論

安井克至

Framesira / Shutterstock.com

アップルは、これまでカリフォルニア州の「修理する権利」法案(SB244)に反対していたが、その姿勢を一転し、この法案の支持に回ったことが明らかになった。これを受け、修理業者らは今後の同社の方針がどうなるのかを注視している。

iFixitの記事によると、アップルは消費者が電子機器を修理しやすくする法案の支持に回ったという。この判断は予想外であるだけでなく、修理に純正部品を使うという同社の要件にどのような影響を与えるか疑問を投げかけている。

「最初に記事を見たときはショックを受けた。アップルらしくない判断だが、すばらしい一歩だ。これでパーツのペアリング制限(デバイスに搭載されたマザーボードが、サードパーティのパーツを拒否する機能)がなくなることを期待したいが、それは難しいだろう。しかし、アップルが提供するクラウドベースの診断とキャリブレーションのツールにアクセスできることはすばらしいことだ」とアップル製品の修理を手がけるiCorrectの創業者リッキー・パネサーは話す。

iPhoneのディスプレイを交換する場合、シリアル番号に対応した純正部品をアップルから購入する必要がある。また、部品はアップルのキャリブレーションソフトウェアを使って同期させなければならない。

「シリアル化された部品はなくならないだろうが、キャリブレーションシステムにアクセスできるようになれば大きな前進だ。部品がシリアル化されているのは、アップルのネットワークに入っていないと同社のツールにアクセスできないからだ」とパネサーは話す。

アップルのキャリブレーションツールは、新しい部品とロジックボードのシリアル番号を同期させる。このツールは、アップルの独立系修理プロバイダプログラムに加入した企業だけが利用できる。プログラムのメンバーになるには、修理プロセスやアップルとの取引に関する秘密保持契約(NDA)に署名する必要がある。

しかし、アップルの純正部品の価格が高いために修理業者の利幅は少なく、以前からプログラムは批判を浴びていた。一部では、アップルがSB244などの「修理する権利」法案を回避するためにこのプログラムを作ったという見方もある。

一部の修理業者は反発

電子機器修理のYouTubeチャンネルを運営し、シリアル化に関する歯に衣を着せない発言で知られるYouTuberのルイス・ロスマンは、最近の動画の中でアップルの修理プログラムに加入しなかった理由について、次のように述べている。

「プログラムに加入するには、制約条件が非常に多く、法的トラブルに巻き込まれる可能性があるNDAに署名をしなければならない。それに加えて、アップルは私のビジネスを監査し、会社を調査することができるようになる。チップセットのように純正品を購入することができない部品を他社から購入したことなどが発覚すると問題になる。このプログラムに加入してしまうと、修理屋として良いサービスを提供することが不可能になってしまう」

アップルは、カリフォルニア州選出のスーザン・タラマンテス・エッグマン上院議員に宛てた書簡の中で、法案支持の条件として「修理業者に非純正部品や中古部品の使用の開示を義務付ける」ことを挙げている。パネサーが望むように、法案成立によってより多くの人や企業がアップルのキャリブレーションツールを利用できるようになるのかどうかはまだわからない。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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