ネオペットのファンだった彼は、ネオペット・メタバースに出合って初めてWeb3を経験したが、「関係のない別のゲームのような感じ」と付け加えた。
2年前にネオペットのWeb3版が発売された際には、ファンたちから懐かしいゲームにNFTを導入することに激しく反対する声が上がり、ゲームの質が下がる可能性や環境汚染が懸念された。
だがローは気後れすることなく、好意的か批判的かを問わず、ファンたちからのフィードバックを歓迎している。
ローは批判にも前向きだ。
「プレイヤーとの信頼構築、コミュニケーション、透明性については過去にも教訓を得てきました」
オンライン・ゲーム企業によるブロックチェーン導入の動きに対する従来からのゲーマーからの反対の動きはめずらしくはない。ポケモン・カンパニー・インターナショナルがWeb3に精通した経営企画トップを募集した際には、ポケモンがWeb3に参入する可能性があると考えた一部のファンから失望の声が上がった。
また「アサシンクリード」を手がけるフランスのコンピュータゲーム企業ユービーアイソフト・エンターテインメントや、韓国の富豪、蒋柄圭の「クラフトン」は、暗号通貨が過熱していた際にWeb3参入を大々的に打ち出したが、その後は中止または苦戦している。
香港に本拠を置く暗号通貨ファンド「エベレスト・ベンチャーズ・グループ」のパートナーであるアンディ・リーは、Web3のゲームが主流になるには少なくともあと2年はかかると予測する。従来からのゲーマーたちを取り込むための方法のひとつは、無料のNFTを配り、初めから暗号通貨ウォレットに結び付いた中央集権型ログインを可能にするなどして技術的な障壁を減らすことだと指摘する。
ただし、そうしたゲーマーをつなぎとめるためには、ゲーム内でのチャットにとどまらず、ゲーム・エクスペリエンスを簡単に共有できるプラットフォームなど、ゲーマー同士の強力な結びつきが必要になるだろう、とリーはつけ加えた。
ネオペット・メタバースでは、ビジュアル面の改善や暗号資産の統合だけでなく、ゲーム内でのプレイヤー同士のやりとりも可能にする予定だとリーは言う。具体的には、バーチャル・ペットの家でのリアルタイムのイベントなどがある。ちなみにネオペット・ドット・コムの時代には、メールやフォーラムしかなかった。
一方でローは、相互運用性にも照準を合わせている。あるゲームで購入したアイテムをほかのゲームで使えるという、Web3の目玉となるアイデアだ。ネオペット・メタバースは、ネオペット・ドット・コムの二次元ペットがデジタル収集物として3D空間にも入れるようにする可能性を検討中だ。
かつてビリオネアだったサム・バンクマンフリードが立ち上げた暗号通貨取引所FTXが破綻したことで、暗号通貨への影響拡大が依然として懸念されているが、ローは、Web3ゲームがゲーミング業界の次なる進化の原動力になると信じている。
「可能性は無限です。30億人を数えるゲーマー全員がWeb3ゲームをプレイする世界を想像できない理由はありません。ネオペット・ドット・コムがWeb1で達成できたことをWeb3でできたら、これほど素晴らしいことはありません」(ロー)
ドミニク・ロー◎ネオペット・メタバースのCEO。米ハーバード大学ビジネススクールでMBAを取得。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーを経て、2020年から中国企業ネットドラゴンで新規市場開拓責任者に。同社が買収したネオペットにWeb3を取り入れるべくネオペット・メタバースをスピンオフさせCEOとなった。