20年前の大人気ゲームにとって、Web3時代はチャンスになるのか

Forbes JAPAN編集部
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「プレイトゥアーン」をどう扱うか

多額の資金と時価総額10億ドルを誇る親会社の支援があるとはいえ、ローが直面しているのはWeb3のビジョンを現実のものとするという難題だ。しかも現在、暗号通貨は暴落が続いている。Web3ゲームは、ゲームで遊んで稼ぐ「プレイトゥアーン(P2E)」、つまりユーザーが暗号通貨を稼ぐことができるのが魅力のひとつだ。だが、P2Eゲームのプレイヤーの大半は、従来のゲーマーではなく投機家だ。

そのため、一連の企業破綻に続いて暗号通貨の暴落が始まると、投機目的だったこれらのプレイヤーは手を引き、ユーザーがいなくなったことで暗号通貨はただ同然となった。

例えば、アクシー・インフィニティという、ポケモンのような対戦ゲームの例がある。同ゲームは、P2Eの代表格だったが、ブロックチェーン分析企業ダップレイダーによると、1日当たりのUAW(ユニーク・アクティブ・ウォレット)は23年4月3日時点で約1万200と21年11月のピークから98%以上暴落したという。暗号通貨ポートフォリオトラッカーのコインゲッコーによると、同ゲームの基軸通貨であるAXSとSLPはどちらも、同時期に過去最高水準に達した後、90%以上暴落した。

P2Eの仕組みが出資金詐欺にならないようにするためローは最近、ほかのWeb3ゲーム同様、P2Eのありかたを変えた。投機を避けるための戦略として、ネオペット・メタバースを楽しくて魅力的なゲームにしたいとローは言う。そうすることで、プレイヤーがトークンやデジタル・アイテムを集め、売りさばくのではなく、ゲーム・エクスペリエンスをアップグレードするためにためたいと思うようになってほしいと考えているのだ。

「Web1やWeb2のゲームは、純粋にゲームを楽しみ、そのなかでお金を使いたい人に人気を博しました。Web3も、同じビジネスモデルでいくべきです」(ロー)

以前のネオペットはすでにWeb3ゲーミングにふさわしい要素をすべて備えていた、とローは言う。1999年に立ち上げられたネオペットは、バーチャル・ペットをブラウザー上で飼ってカスタマイズするゲームだ。プレイヤーはミニゲームや戦闘、冒険などを通じて「ネオポイント」という暗号通貨やデジタル・アイテムを稼ぐことができる。ネオポイントは、ペットの餌やおもちゃ、ペット用のかわいい洋服を買ったり、ペットの住まいを整えたりするのに使える。

架空とはいえネオペットの世界には、プレイヤーが経営する店舗やオークション・ハウス、利子をつけてくれる銀行、さらにはEEEEEURGH!!! Ltd.やYippee!といった架空の会社が上場する株式市場まであり、経済は活気にあふれている。

ネオペット・メタバースはゲームとして遊べるアルファ版まで完成しており、まずは、かつてのオリジナル版のファンや暗号通貨愛好家を引きつけるところから始め、そのうえで一般的なゲーマーにも働きかけていく予定だ。ローによると、ネオペット・ドット・コムが過去24年間に集めた約1億5000人の登録ユーザーのうち、約9000万人は米国とカナダ、約1000万人はアジアからアクセスしている。

ローによれば、ネオペット・メタバースはすでに約5000人のネオペットNFT保有者とネオペット・ドット・コムの熱心なプレイヤーに対しいくつかの試作品を提供している。だが、なかには3D仮想世界でのゲームに乗り気ではない人もいる。

ネオペット・プレイヤーの@ハーディはチャット・アプリのディスコードでこうコメントしている。
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文・写真=ジニア・リー 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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