20年前の大人気ゲームにとって、Web3時代はチャンスになるのか

今なお根強い人気を誇るネオペッツ(Jakub Porzycki / NurPhoto / Getty Images)

今なお根強い人気を誇るネオペッツ(Jakub Porzycki / NurPhoto / Getty Images)

コンサルティング会社PwCは、世界のゲーム産業が2026年までに3210億ドル規模に達すると見積もっている。そうしたなか、香港のゲーム開発会社が20年以上前に世界を席巻したゲームを「Web3」で復活させようとしている。


2000年代初頭に、当時9歳から12歳で初めてインターネットに触れた人は数千万人に上る。ドミニク・ローも暇さえあればバーチャルサイト「Neopets.com(ネオペット・ドット・コム)」に入り浸っていた。竜に似たデジタル・ペット「ショイル」に餌のゼリーを与えたり、ミニゲーム「エクストリーム・ポテト・カウンター」で暗号通貨を稼いだり、サイト内で恐竜の卵の巨大なオムレツがある広大なオンライン・ワールドを探検したりしたものだ。だが2、3年もしないうちに、ローたち多くのユーザーは学校の試験で忙しくなり、仮想ペットには構わなくなっていった。

それから20年以上がたち、35歳になったローがネオペットと再会した。17年にネオペットを買収した中国のオンライン・ゲーム企業ネットドラゴン・ウェブソフトに就職したのだ。ハーバード・ビジネス・スクールを卒業したローは、Web3テクノロジーをオンライン・ゲームと結びつけることの潜在性に着目し、大流行したネオペットの人気を再燃させられると考えたという。

かつて米国のコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーで経営コンサルタントを務めたローは、20年から中国の福建省福州市に本拠を置くネットドラゴンの新規市場開拓責任者を務めている。ローはネオペットに、話題のWeb3を取り入れることに特化した新会社を立ち上げるよう、かつてフォーブスの中国長者リストに選ばれたことのある劉徳建会長を説得した。そして21年初め、ネットドラゴンのスピンオフとしてネオペット・メタバースが立ち上げられ、香港にラボがつくられた。

ネオペット・メタバースの最高経営責任者(CEO)に就任したローは、以前のネオペットのウェブサイトを基にWeb3ゲーム「ネオペット・メタバース」を開発している。ユーザーは、ミニゲームやほかのユーザーのペットと戦うことで暗号通貨や、NFTをつくるためのデジタル・アイテムを稼ぐことができる。24年第1四半期にもローンチ予定の新ゲームが、世界全体で約1億4000万人もいたネオペット・ユーザーの思い出を呼びおこし、Web3に導いてくれるよう期待している。当時、ネオペット・ドット・コムがWeb1への扉を開いたように。

「ネオペットは、プレイヤーをインターネットの世界に導いた最初のオンライン・ゲームのひとつです。ネオペット・メタバースもWeb3の世界を紹介する初のファンゲームを目指しているのです」(ロー)

ネットドラゴンの投資家はローの熱い気持ちを共有しておらず、香港に本拠を置く同社の株価は21年の年初から約18%下落している。一方、ハイテク専門の一部の投資家はローのWeb3ゲームが成功するとみている。23年1月、ネオペット・メタはブロックチェーン・ファンドのポリゴン・ベンチャーズやブリザード・アバランチ・エコシステム・ファンドといった投資家に加え、ベンチャー・キャピタルのIDGキャピタル、ハッシュキー・キャピタルから400万ドルを調達したと発表した。
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文・写真=ジニア・リー 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

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