ところが2週間くらい前に、バフムート周辺でのウクライナ軍の攻撃は鈍くなった。ひどく鈍くなった、と言ってもいいかもしれない。米航空宇宙局(NASA)の火災検知衛星のデータによれば、バフムート周辺のホットスポットは8月9日ごろをピークに減少している。一帯での戦闘が大幅に沈静化したことを示唆するものだ。
第96、第108親衛空挺師団は以後、バフムートを危険にさらさずに連隊を自由に動かせるようになったとみられる。おそらくその結果、第76親衛空挺師団は東部での作戦予備としては余剰になり、南部での防御のてこ入れに向かえる状態になったのだろう。
東部でのウクライナ軍の攻勢は、ロシア軍の予備を釘付けにすることで、南部での攻勢を間接的に支援していた。それについてはウクライナ軍指導部も当然、初めから理解していたはずだ。では、なぜここへきて東部での攻勢は鈍くなったのか?
もしかすると、これまで攻撃を主導してきた第3、第5強襲旅団は、休息や修理、そのほか数カ月にわたる激戦による損害の埋め合わせのために小休止しているのかもしれない。ウクライナ軍には、これら前線の旅団の代えとなるほどの予備が、一時的ですらない可能性もある。
ロシアがウクライナに対する戦争を拡大してから1年7カ月。およそ1000kmにおよぶ前線で両軍の戦力バランスが次々と変わることは、この戦いがいかに激しいかを裏書きしている。双方とも常に、わずか数個の旅団や連隊が疲弊しただけで、勢いが相手側に移りかねない状態にあるのだ。
現在、南部ではウクライナ軍に勢いがある。他方、クーパーの見解にしたがえば、東部では、少なくとも防御区域全体を不安定化させずに師団を配置転換できる程度には、ロシア軍に勢いがあるのかもしれない。
(forbes.com 原文)