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2023.09.02 11:30

「ビル・ゲイツもシリア難民も使う」語学アプリDuolingo、CEOが語る誕生秘話

2009年にグーグルに売却した「reCAPTCHA」とは

私が開発したシステムで広く使われているものに、「信号、自転車をすべて選べ」とか「ゆがんだ文字を読め」といった、コンピューターができないことを利用して、人間であることを証明する「CAPTCHA」があります。

発端は2000年、カーネギーメロン大学のPHDコースで研究していた頃、Yahoo! のチーフサイエンティストと話したことです。その時に彼が言ったのは、「現在、10の解決できない課題がある。そのひとつが、プログラムで数百万のメールアカウントを自動生成するハッカーに対抗できないことだ」でした。

そこで、コンピューターがゆがんだ文字を読むのが苦手な点を利用して人とコンピューターを見分けるシステムを提案しました。そのシステムは3週間後にはYahoo! のサイトトップにインストールされましたが、この時のギャランティーはゼロでした(笑)。

「CAPTCHA」を通して人が読み取ったデータを蓄積して行き、コンピューターが苦手な、読み取りにくい文字を読み取ることに応用できるようになりました。

この「CAPTCHA」は1日に2億回利用されており、1回あたり10秒とすると、世界人口の50万時間を「無駄」にしていると感じました。あの認証テストは本当に面倒くさいですよね。ご迷惑をおかけしています(笑)。そこで、この作業時間を有効活用できないかと考え、新聞の過去記事や書籍のデジタル化に活用すべく、「CAPTCHA」に価値を与えられる「reCAPTCHA」を開発したのです。

実はある時、「ニューヨークタイムズ」誌のCTOが、過去のアーカイブを電子化したいと相談してきました。

いくら払えばいい? と聞かれたので30年分のアーカイブ記事を人が作業した場合のコストを算出し、それを参考に「過去記事1年分の電子化で42000ドル」を請求しました。でもやってみると、その1年分は1週間でデジタイズできた。つまり週当たり610万円の収入になったわけです。けっこう大きな額になってきたので、大学から、大学の資材を使って収益を上げているね、会社にしたら、と言われて起業せざるを得なくなったんですよね(笑)。「reCAPTCHA」は実際に、グーグルとアマゾンが物理書籍から電子ブックを作るときに使われました。2009年にグーグルに売却しました。


「共同創業者」が重要な理由

「reCAPTCHA」は一人で創業しましたが、Duolingoは共同創業者と立ち上げました。これから起業する人たちに言いたいのは、なによりも、共同創業者は必要ということです。なぜなら、社員は私をよろこばせようとする、でも、共同創業者は違って、言いたいことを言ってくる。そのことは、心理的にメリットがあるんですよね。

私は学生時代から数学がものすごくできたので、数学ばかり勉強していたのですが、起業してみると待っていたのは「人」に関わる仕事ばかり。今は、もっと人と関わる方法を学んでおけばよかったと思っていますね。

Duolingoのロールプレイでは、「人間らしい会話」を目指していません。人と人との会話はだいたい退屈ですから(笑)。われわれが目指すのはひたすら、「おもしろい」会話です。ハリウッドのライターに脚本を書いてもらっているのは、それが理由です。
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訳・文=石井節子

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