バイオ

2023.09.02 13:30

ジンベエザメの体表に存在する驚異的な微生物の世界

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一見すると、私たちの肌は退屈に見えるかもしれない。しかし、より注意深く見ると、すべての細胞が、その表面に複雑なネットワークを指揮する微生物の隠れた世界を持っている。これらの小さな生物は肉眼では見えないかもしれないが、私たち全員の健康とバランスを維持するための重要な役割を果たしている。これには、海中の最も大きな魚も含まれる。

その巨大さにもかかわらず、ジンベエザメ(Rhincodon typus)は一般的に穏やかで人間には無害と考えられている。黒い地肌に白い斑点と線の独特の模様で覆われ、巨大な体を持つことで有名なこの濾過摂食魚は、世界中の熱帯や温帯の海で見られる。通常は単独で行動するが、プランクトンの大発生や産卵期など、餌が特に集中する場所では、集団で見られることもある。

ジンベエザメは、国際自然保護連合(IUCN)によって、脆弱な種と考えられている。科学者たちは、ジンベエザメの行動、生態、回遊パターン、遺伝学をより深く理解するために、積極的な研究を行っている。衛星タグづけや遺伝子解析などの技術の進歩は、彼らの生活に貴重な洞察を提供している。最近の研究は、ジンベイザメの異なる環境に関係なく、世界中で微生物が驚くほど類似した複雑なコミュニティを形成していることを発見した。

微生物(マイクロオーガニズム)とは、私たちの目では小さすぎてちょっとやそっとでは見えないような小さな生物たちだ。その小さなサイズにもかかわらず、微生物はさまざまな生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たし、地球上の生命にとって不可欠であり、バクテリアや古細菌、真菌、ウイルス、原生生物など、多様な形態で存在する。これらの微小な生物は、宿主の健康にも大きな影響を与える。しかし、その多様性は刻々と変化しており、ジンベエザメとの関係を理解することは困難であることが判明している。疑問なのは、これらの微生物がこの巨大な宿主の健康にどのように貢献しているのかということだ。

この謎に挑むため、科学者チームがジンベエザメの微生物の世界を探る旅に乗り出した。研究チームは、ラパス、カンクン、マフィア島、ニンガルーリーフ、オスロブを含む世界の5つの異なる場所で74匹のジンベエザメを調査した。これらのジンベエザメの個体群は、居住エリアが世界的に分散していることから、宿主とそこに生息する微生物との関係を調べるのに最適なモデルとして選ばれた。

「サンプルは、濾過された海水を皮膚表面上で循環させてからシリンジに吸い込む方法で採取された」と著者らは論文で説明している。「この方法によって、海水の微生物混入を最小限に抑えながら、海中にいるジンベエザメから微生物を採取することが可能になった。各サメから4つのシリンジが取られ、約180mlのサンプルが得られた、これをフィルターに通すことで、フィルター上にすべての微生物を捕捉することができた」この研究では、その非侵襲的な性質に従い、特定のサメの領域に焦点を当て、表皮の微生物相に焦点を当てた。このアプローチにより、ジンベイザメは最小限の中断で餌取りと泳ぎを続けることができた。
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翻訳=酒匂寛

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