だが、これまでと異なるのは、感染した場合のリスクが大きい乳幼児や高齢者、そして妊婦がRSV感染によって下気道疾患(LRTD)を発症したり、重症化したりすることを防ぐワクチンがすでに開発されているということだ。
RSVは年齢に関わらず、誰でも感染する可能性があるウイルスだが、米疾病対策センター(CDC)によると、米国ではRSV感染によって入院する5歳未満の患者は毎年およそ5万8000~8万人。高齢者は毎年約6万~16万人が感染して入院し、6000~1万人が死亡していると推定されている。
以下、特にリスクが大きい3つのグループに対して使用が承認されたワクチンについて紹介する。
・乳幼児(モノクローナル抗体製剤)
米食品医薬品局(FDA)は2023年7月、英アストラゼネカが仏サノフィと共同開発したモノクローナル抗体製剤「nirsevimab(ニルセビマブ)」を承認した。ワクチンではないものの、抗体を注入することにより、一定期間にわたってLRTDによる発症や重症化を予防する効果がある。臨床試験では、それらを防ぐことにおける有効性は、どちらも約77%だった。副反応は軽度で、最も多く報告されているのは、注射をした部位の発疹だという。
米疾病対策センターは、出生後に最初のRSウイルス流行期を迎える前、生後8カ月までに、ニルセビマブを投与することを推奨している。生後8カ月~19カ月の乳幼児についても、リスクが高いと判断される場合には、2回目の流行期に入る前の投与を勧めている。
・妊娠中の女性
そのほか米食品医薬品局は8月、新生児のRSV感染によるLRTDを防ぐため、妊娠中の女性が接種するタイプのワクチンとして初めて、米ファイザーが開発した「Abrysvo(アブリスボ)」を承認した。妊娠後期(32週から36週)にアブリスボの接種を受けることで、新生児のLRTDの発症と重症化のリスクを一定期間、低減させることができるという。二重盲検試験で行った臨床試験の結果では、感染後の重症化を防ぐ効果は生後3カ月までが82%、生後6カ月までが69%だった。