企業と副業人材のマッチングサービスを手がける「Another works(アナザーワークス)」は、昨年10月から「複業」を活用した新たな形でのセカンドキャリア支援に取り組み始めた。
プロスポーツ選手たちへの新たな形と言えるキャリア支援。他のサービスとはどんな違いがあるのか、またどのような成果が生まれているのだろうか。
実践形式の支援で差別化
現在、スポーツ選手に対するセカンドキャリア支援には、さまざまな企業や団体が取り組んでいる。その多くはビジネス研修講座やキャリアコンサルタントによるメンタリングなど教育機会の提供や、引退後を対象とした正社員雇用の企業紹介だ。こうした状況を受け、アナザーワークスが取り組むのが、現役選手と複業人材を求める企業のマッチング。同社代表の大林尚朝は「他のサービスとの違いはインプットとアウトプットを同時に実践できること」だと語る。
アナザーワークスが手を組んだのは日本スポーツキャリア協会。同協会では、現役選手向けに6カ月間のキャリアコーチングプログラム「athleticaアカデミー」を提供している。
元プロスポーツ選手のメンターによるキャリアプラン策定の1on1、社会で活躍している元選手の講演、それに他の競技選手とセカンドキャリアを考え合うコミュニティ参加などがサービスの内容で、ここにアナザーワークスによる「複業」という新たな選択肢が加わることになった。ただ、あえて複業という言葉を使っている通り、選手たちは金銭的報酬は受け取らない。
昨年10月から今年3月までが第1期、そして4月から第2期として支援が始まっており、すでに10人以上の現役選手たちが、実際に複業をしている。
自身のキャリアデザイン(インプット)をしながら、複業というかたちで実践的な就業訓練(アウトプット)を積むことができるのだ。
「アナザーワークスは計1000企業、100自治体に導入されています。選手の希望に応じた企業を紹介でき、ミスマッチも起こりにくいというのが強みです」(大林)
高まるセカンドキャリアへの関心
実際に、第1期生として複業を経験した柏レイソル(サッカー)の小屋松知哉は「選手間でもセカンドキャリアの話をする機会は多い」と話す。「僕が高卒で入団した10年前は、セカンドキャリアを語る人はほとんどいませんでした。それがいまでは、副業が当たり前の時代になったこともあり、先輩から後輩に『引退した後はどうするの?』といった会話がよくあります」(小屋松)
働き方の多様化が進むなかで、スポーツ選手でも本田圭佑や為末大などのように経営者や投資家として活躍するケースや、またコーチなどに回るという選択肢もある。だが「実はそうした道を理想のロールモデルと考える人は少ない」と大林は語る。
「いま関わっているアスリートたちは皆『現実主義』。結果勝負で、来年の生活が保証されないという環境にあって、キャリアについても漠然とした不安を抱えている人が多いんです。また、これまで表舞台に立ってきた人たちなので、コーチなど支える側に立つのは理想ではないと言う選手もいます」(大林)
前出の小屋松も「セカンドキャリアに辿り着くまでに苦労する人を見てきたので不安を持っていた。なので、現役のときから企業で働く経験をしてみたいと思っていました」と話す。