3Mは今後数年間で、原告側に現金で50億ドル、株式で10億ドルを支払う。これに伴い、2023年第3四半期には42億ドル(約6100億円)の税引前損失を計上する。
3Mは、合意は同社の責任を認めるものではないと強調。問題の製品は「適切に使用されれば安全で効果的だ」と主張した。
問題の耳栓は、3Mが2008年に買収したエアロ・テクノロジーズが製造。戦闘での騒音から軍人を守るため、2003年から2015年まで米軍で使用されていた。
耳栓をめぐる一連の訴訟が始まったのは2016年、工業用品メーカーのモルデックス・メトリックが、3Mが米軍に販売した耳栓に欠陥があることを知っていたとの内部告発に基づき起こした訴訟がきっかけだった。3Mは2年後、司法省に910万ドル(現在の為替レートで約13億円)を支払うことで和解。フロリダ州だけでも30万人以上が3Mを相手取って訴訟を起こし、2019年にはこれらの訴訟が多地区訴訟に統合された。この訴訟は、今回の合意で和解に至った訴訟に含まれている。
2019年に発表された論文では、2001年から2015年にかけて現役軍人の間で耳鳴りの発生率が大幅に増加したことが報告されており、耳栓をめぐる懸念を裏付ける形となった。フロリダ州ペンサコラで行われた裁判では昨年、陪審が3Mに対し、耳栓の使用により難聴と耳鳴りが生じた陸軍退役軍人ジェームズ・ビールに7750万ドル(約110億円)の支払いを命じている。
(forbes.com 原文)