健康

2023.08.30

30歳未満で死亡のアスリート、4割に慢性外傷性脳症

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30歳未満で亡くなったアスリートのうち40%超が、進行性の脳変性疾患である「慢性外傷性脳症(CTE)」を発症していたとの研究結果を、米国の研究チームが28日、医学誌「JAMAニューロロジー」に発表した。選手同士が体をぶつけ合う「コンタクトスポーツ」の代名詞のようになっているCTEについて、実際に影響が広がっていることが裏づけられた。

米マサチューセッツ州にあるボストン大学CTEセンターの研究者らは、コンタクトスポーツで繰り返し頭部への衝撃にさらされ、2008〜22年に30歳前に死亡したアスリート152人の提供された脳を調べた。すると、CTEの最初期の段階を示す特徴はそのほとんどに確認された。

また、63人は死亡時にCTEの診断を受けていた。

研究対象者の死因で最も多かったのは自殺だったが、うつ病の臨床症状とアスリートのCTEを関連づけることはできなかった。70%近くがうつ病や無気力症を訴えていたものの、59%はCTEを発症していなかった。

調べた脳の大半はアメリカンフットボール選手のものだったが、ほかにユースや高校、大学でプレーしたアイスホッケーやサッカー選手のものも含まれる。

どんな症状が出る?

CTEはコンタクトスポーツの選手によくみられる頭部外傷で、米国立衛生研究所(NIH)の国立医学図書館によると記憶喪失や錯乱、うつ病、認知症などを引き起こす。ボストン大のCTEセンターは、CTEには「症状を引き起こす脳震とうと、症状を引き起こさない頭部への軽度の打撃の両方が含まれる」と説明している。

研究者たちは過去30年、コンタクトスポーツにともなう頭部への度重なる打撃の影響について調べてきた。CTEは1920年代にはボクサーの罹患が知られていたが、2000年代に入ってほかのスポーツの選手でも症例が確認され、一気に周知されるようになった。ニューヨーク・タイムズ紙は2007年、元アメフト選手のアンドレ・ウォーターズがプロ時代に脳にダメージを受け、それが原因でうつ病を発症し、最後には自殺で亡くなったと報道している。

2017年には、2年前に亡くなっていた元アメフト選手のフレッド・マクニールについて、存命中にCTEが見つかっていたことを研究者らが明らかにした。存命中にCTE患者と確認されたのはマクニールが初めて。それ以前は、CTEは死後の脳検査でしか特定できなかった。

今回の研究では、米国の女性サッカー選手としては初のCTE診断例も見つかった。女性は28歳で亡くなっている。1カ月ほど前には、昨年死去した元オーストラリアンフットボール選手のヘザー・アンダーソンが、女性プロスポーツ選手としては初めてCTEを患っていたことが判明していた。

昨年発表された研究によると、米国では2000〜19年にスポーツ用具によって子ども約620万人が外傷性脳損傷を負っている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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