「メールを見たときは、英語でもスパムメールが届くんだと思いました」と、Cloudbase代表取締役の岩佐晃也は話す。同社は22年8月、メールの送り主であるArena Holdingsと日米拠点のDNX Venturesによる共同リード投資で、総額1.3億円のシードラウンドでの資金調達を発表。この投資家は、これまで「Forbes JAPAN起業家ランキング」で上位のSmartHR、UPSIDER、CADDiに投資。海外投資家によるシードラウンドでの国内スタートアップへの投資は異例だ。
「 運用総額が数千億円ともいわれるArena Holdingsでも、投資金額を含め、今回の出資は特例だったようです」
Cloudbaseが事業を展開するCSPM(Cloud Security Posture Management、クラウドセキュリティ態勢管理)の領域は、企業のパブリッククラウドの利用増加に伴い、海外で先行して市場が急拡大。創業から1年半でARR(年間経常収益)が1億ドルに達したWizなど、企業評価額が100億ドルを超すデカコーン・スタートアップも現れている。国内でもパブリッククラウドの利用は年々増加し、26年には市場規模が4兆円を超すとの予測(IDC Japan調査)がある。Arena Holdingsは、日本におけるCSPMの市場規模の大きさを有望視していた。
「『Cloudbaseはとんでもない会社だから普通のSaaS企業になるな』と言われています。『T2D3(ARRを3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と毎年伸ばすこと。有力スタートアップの成長速度の目安)を目指す』と話したところ、『T2D3なんて言うな。それはVCの言葉だ。自分たちと顧客のために急成長しながら、ファイナンスをしよう』と。常に世界基準に引き上げてくれ、鼓舞されています」
そんな岩佐だが、起業後は6回のピボットを経験するなど、歩みは順風満帆ではなかった。岩佐は、大学在学中にエンジニアリングを身につけ、19年に上京して起業。毎回、サービスをつくっては事業可能性の乏しさに気づくという具合だったが、先輩起業家によるアドバイスのもと、入念な事業検証の末にクラウドセキュリティという領域にたどり着いた。
現在はアイフル、スズキ、エイベックスをはじめ、大企業でのサービス導入が進んでいる。目指すのはクラウドセキュリティで国内シェア1位、さらに視野に入れるのは海外展開だ。「サービスを通じて、日本の大企業の力を底上げしたい。沈みゆく日本をなんとかしたいというのが、根本の思いにあります。そしてゆくゆくは、世界で使われる偉大なサービスをつくりたいですね」
いわさ・こうや◎1996年生まれ。10歳からプログラミングをはじめ、特にセキュリティ関連に興味をもつ。学生時代からさまざまなサービスを開発し、京都大学工学部情報学科在籍時の2019年11月にLevetty(現・Cloudbase)を創業し、現職。